東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年04月04日

幸せの黄金鯛焼き 上板橋店【上板橋@東武東上線】

     
 
たい焼きを買いに上板橋に来た。

南口に出て上板橋南口銀座へ入って道なりに進む。
すっかり行列の治まった和菓子屋を過ぎて、
ファミリーレストランの看板が立つ交差点の信号が見えて来る位に、
左手を見れば「幸せの黄金鯛焼き 上板橋店」がある。

私鉄沿線の商店街の見本の様な風情が漂う、
良い具合に古び掛かった高度成長期の建物が、
其処彼処に残る商店街に混じって軒を連ねるたい焼き屋は、
店名が記された真新しいテントの軒を張りだして佇んでいる。
店名を記した行燈看板が随分と高い所にあるのを店先で眺めいると、
片側だけシャッターを開けた店内の奥では、
黙々と作業をする店員さんの姿が確認できる。

時刻は午前10時。
開店時間を迎え慌ただし気な店先から離れ待つ事数分。
店内より現れた店員さんが残るシャッターをガラガラと上げ、
併せ持ち出した幟を店の脇に立て黒い立て看板を歩道の隅に置く。
開店準備が完了した様子の店頭は全面ガラス張りで、
そこにたい焼きのポスターが一枚貼られているだけの簡素な趣。
一見クリーニング屋の様な店へガラスの引き戸を開け中に入ると、
店内にはサツマイモの甘い香りが充満していた。
その甘い空間に呪文の様に繰り返す歌声がこだましていて、
ある種の瞑想するにはもってこいの場所となっている。

店内は端には会計口が設けられ、
その続きで保温ケースが置かれている焦げ茶色の板壁が、
客側と調理場側とを仕切っている。
その凡そ中央部でオレンジ色に輝く保温ケースには、
既に結構な数のたい焼きがズラリと並べられている姿が確認できる。
会計口に立ち注文をお願いすると、
店内には2名の女性店員さんが切り盛り中で、
ソコからより強烈なサツマイモの甘い香りが漂ってくる。
会計口からは焼き台が確認できないが、
耳にはナニかが焼けるプスプスという音が届いて来る。

そんな中で店員さんが仰るには、
注文した“大納言粒あん”はあと6分少々掛かるとの事。
その旨了承して代金を支払いポイントカードに判を押してもらい、
甘い香りが満つる店内にて独りポツンと、
焦げ茶色の壁に貼られた品書きでも眺めながら待たせて頂く。

品書きには“大納言粒あん”の他には“カスタード”と、
デニッシュの生地で作られるたい焼きなら“チョコレート”と、
今やたい焼き屋では当たり前になった品揃えに加え、
季節柄の“さくらあん”といった期間限定品が並ぶ。
そして「幸せの黄金鯛焼き」といえば看板商品は、
安納芋を使った“黄金あん”である。

そうなると目の前にズラリ並んでいるのはソレかと推察しながら、
種子島にあるという自社農場の安納芋のポスターを熟読していると、
外の商店街を往く人々がその視線の隅を掠めて行く。
自転車の主婦や買い物袋を提げた老夫婦が、
皆一応の興味を持って横目で店先を見て行く人々に加え、
鼻先をガラス扉に近付けて店内を窺う老紳士や、
更にはガラス扉にベッタリと貼り付く少女と、
その手を引いて引き剥がそうとする母の攻防。

そんな人間模様が繰り広げられる一方で、
店内では2名の店員さんが調理場の作業台で黙々と作業する姿が、
保温ケースの隙間から窺う事が出来る。
焼き上がったたい焼きの周りに出来た余剰部分、
つまりはバリをハサミでもって切り落とし姿を整える作業。
それは朝方のNHKで何度か観た事のある光景の、
地方漁港で水揚げしたばかりの大量の鮮魚を、
港の脇にある加工場で漁師の嫁衆が挙って作業する姿とだぶる。
モノが魚型である上に神戸という港町発祥という事が要因かと、
取り留めない妄想に浸っていると入り口ガラス扉が開く。
先程ガラス扉に貼り付いていた少女の凱旋である。

後に付いてやって来た母親を引き連れて入店した少女は、
保温ケースの前に経つと暫しの間中に並ぶたい焼きを注視。
背後の母親に振り返り前回購入時の中身を確認して更に一考。
その間会計口に現れた店員さんと母親の遣り取りから、
どうやら父親の到着を待ってからの購入となるらしい。
品書きをジックリと眺めた少女はやがて母親の元へ戻り、
“カスタード”に決めた旨を伝え後は父親を待つだけとなった。

しかし父親が中々現れない。
その間やって来る客に機敏に反応するも、
来店客が女性だと判ると明らかに抜ける緊張感。
最早直立する事も放棄してハナをホジホジしながら待つ、
すっかり飽きた感満載の少女と店内の両端で対峙する事数分。
待ちに待ったたい焼きとの対面を果たす。
店員さんに長居を詫びて店を出ると信号の交差点へ、
その右折した先にある駐車場にて荷を解く。

一尾ずつ紙袋に入ったたい焼きを手に取ると、
身体から発する高熱と共に指先に伝わるジャリジャリとした感触。
たい焼き側面を気泡が造り出した穴隙が連ななり、
ガリガリとした触感を伝えて来る。
しかし硬いのは側面部分だけで焼き立ての皮はしなやかで、
中の餡が流動するのを制御できない位に柔軟である。
いくら慎重に持ってもデロンと身体を投げ出すたい焼きの、
その両の端を指に掛けて持ち上げてそのグッタリとした所を、
磯辺巻きでも食する様にパクリと一口齧る。

ザラザラとした食感の皮は薄くモチモチとした強靭なコシがある。
その皮を食い千切るとその僅かな隙間から、
直ぐに餡が流れ出してきて容赦なく口内の至る所を焼いていく。
「幸せの黄金鯛焼き」は“大納言粒あん”にも、
こっそり“黄金あん”入っている2色餡となっているのだが、
この2段構えの餡が事の他熱いうえに中々冷めない。
たい焼きを頭から食べたとして、
大概はどんな出来立て焼き立てたい焼きだって、
尾びれ辺りまでくれば冷めてしまうモノであるが、
コチラ「幸せの黄金鯛焼き」のたい焼きは、
尾びれまで来ても十分熱い。

尻尾までアンコが入っているというのは良くある事だが、
尻尾までアンコが熱いというのはなかなか無い話である。

それが安納芋の成果かどうかは判らないが、
この粒餡の滑らかな舌触りと厚みがる柔らかな甘さは、
間違いなく安納芋の効果があっての事であろう。
その柔らかな甘味とトロトロの舌触りをモチモチの皮が包み、
道行く先々でヤケドを作っていく。
和食惣菜の鉄板的組合わせ“いとこ煮”をたい焼きで堪能しつつ、
2尾目を食べる前に冷えたお茶の必要性をヒシと感じ、
急いで背後にそそり立つ自販機にコインを投入する。

価   格○大納言粒あん 150円
住   所○東京都板橋区上板橋1-21-7
営業時間○10:00〜19:00
       月曜 定休
 
   
  

posted by EY at 21:45| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 板橋区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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