東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年05月23日

薄皮たい焼き みづほ 河辺とうきゅう店【河辺@青梅線】

     
 
たい焼きを買いに河辺に来た。

ツバメが飛び交う北口に出るとペデストリアンデッキが、
時計台と河辺駅北口交差点をグルリと囲う様に延ている。
その交差点を越えた向こう側には、
駅前へ通じる道に沿って城壁の様なビルが立ち並び、
片方には市役所と図書館と温泉があり、
もう片方には東急ストア2階部分へと直結していて、
その両方を中空に浮かぶ渡り廊下で繋いでいる。
その東急ストアの中でもって営業しているのが、
「薄皮たい焼き みづほ 河辺とうきゅう店」である。

午前9時50分。
ペデストリアンデッキの先にあるエントランス部分には、
既に数名のお年寄りが佇んでいる。
其処までは開店前の百貨店関係ではよくある光景だが、
更に進んだ2箇所ある正面入り口前では、
数名の子供達が綺麗に男女に分かれてたむろっていた。
テンションが高まりゴムボールが擦れる様な奇声を漏らし、
開店を待ちわびる子供達を横目に、
ガラス張りの玄関口から中を伺うと、
薄暗がりの店内に見える「薄皮たい焼き みづほ」の看板。
その中では店員さんが一人黙々と、
焼き型に油を馴染ませている様な仕草を繰り返している。

先ずはその存在と営業の確認が済んだ所で玄関口を離れ、
エントランスを貫く柱に記されたフロアガイドを見る。
どうやら4階部分に子供向け施設が充実している様子で、
いつの間にかエントランスに集まりだした大人達の会話によれば、
新しいゲーム機が追加されたと耳にして、
そりゃテンションも上がるし奇声も発する訳である。
そして入り口を中心にして同心円状に、
子供、老人、中年、と取り囲むエントランスに混じって、
独りポツンと待って迎えた午前9時58分に東急ストアは開店。

撃ち出された様に店内へ駆け込む子供達に続き、
店員さんの出迎えを受けゆっくり入店する老人の後に、
一目散に「薄皮たい焼き みづほ」へ向かう。
角地に立つブースに掲げられた見慣れた看板と、
“お好み焼”や“チリソーセージ”といった、
食事系たい焼きの存在は勿論の事、
流行りのデニッシュ系たい焼きをも扱う品揃えに加え、
お馴染み“ソフトクリーム”や“タピオカドリンク”の存在は、
一分の隙も無く「薄皮たい焼き みづほ」である。
通路に面したガラス窓に設えられた焼き型は6連式が5台で、
内3台が現在稼働中でその一台に於いて今は、
食事系と思われる具材を載せた半身が、
まだまだ火が通らないツヤツヤの生地を湛えている。
反対側の路面には会計口と保温ケースがあり、
当然開店直後のケース内はもぬけの殻である。

早速注文をしようと店員さんに声を掛ける。
すると店員さんは焼き上がりまで30分掛かると仰る。
その数字に一瞬思考が停止して呆然とするが、
ふと麻布十番や人形町や四谷は勿論、
根津でも普通に平気な顔して並んでいた事を思い出す。
そして即座に了承して代金を支払いながら、
この一瞬の思考停止が意味する所を考え、
その精神性に不意に顔を覗かせた傲慢に己を恥じ深く反省。
そして気を取り直しその時間で出来る事を弾き出し、
店員さんに一声掛けて会計口を離れたその直後、
店の角に立てられたスタンドに掛けられている紙に記された、
店側からの伝達事項に目を奪われる。
その紙にはこう記されている。

 たい焼きが生まれ変わりました
 たい焼きの生地がしっとりと
 厚焼き
 になりました。
 薄皮たい焼き みづほ

厚焼き。
「薄皮たい焼き みづほ」なのに。
いきなりの自己否定な訳であるが、
其処は「薄皮たい焼き みづほ」に何か策があっての事であろうと、
其れを更なる楽しみの一つとして取っておこうと、
そんな心持で足取り軽く東急ストア内の散策を始める。

かなり広い店内をぶらぶら巡り、
4階に入った時の大人達から発せられる視線の鋭さに慄き、
急急と退出して来て戻ってきた「薄皮たい焼き みづほ」の前。
チラリと窺った感じでは完成は近そうなので、
店舗ブース前にある共有スペースにある、
ズラリと並べられたテーブルに早くも買い物戦線から離脱し、
壁壁とした表情を浮かべる老紳士達に混ざり腰を下ろし待つ。
そしてたまたま横に座っていた見ず知らずの老人から、
御自分が今現在服用している薬について、
実際に現物を並べ順番に次々飲み込んでいくという、
実演付きの指南を受けつつ待つこと数分でたい焼きは焼きあがった。

一つずつ小袋に入れられ更に紙袋で纏められた上に、
手提げに入れられたズシリと重いたい焼き達を受け取り、
重々礼を述べた後に老人にも挨拶をして店を後にする。
東急ストアを出た先のエントランスから見える、
ペデストリアンデッキと河辺駅を眺めながら、
早速一尾取り出そうと小袋に手を入れる。
コツンと指先に当たる硬い質感の塊が存在しているが、
その感触は到底たい焼きとは思えない物であり、
疑問を抱きながら取り出しと其れは懐かしい姿があった。

少々小振りな中身の無い素焼きのたい焼きが2尾合わさり、
その間で墨の様な餡が棒状で挟まっているアノ形式。
皮の表面は素焼きレンガの如き焼き上がりでザラザラして、
たい焼きの縁辺りは余剰した生地は無く、
圧着したような形状でツルリと綺麗に仕上がっている。

成程そう来たかと感心しつつ早速一口齧ってみると、
ザクザクと硬い食感を纏った表面の芳ばしい歯応えが出迎える。
其れを越えて到達する内部の生地は逆にモチモチとした仕上がりで、
ふんわりとした感触を仄かな粉の風味と甘味が噛む度に広がる、
王道の厚皮たい焼きの雰囲気を醸し出す皮に仕上がっている。

一方で形状的に大口を開けて齧り付く上で仕方なく力は入るモノで、
ただ2つのたい焼きが合わさっただけに皮を食べ進めると、
接合部分からは当然に熱で殊更緩くなった餡が食み出し、
指先にベタリと付いて高温による衝撃を加えてくる。
慌てて口で救い上げて口内へ押し込んだ粒餡は、
ネットリとした感触で舌へ絡まり、
濃厚なアズキの風味と抑えた甘味をジンワリと浸透させていく。

そして其れはやがて内部の柔らかな皮と癒着して融合を果たし、
モッタリとした重さを発揮して舌と両顎に心地よい抵抗を生じさせ、
其処に硬質な焼き目を残した表皮の残党が加わる。
口内で渦巻く“柔”と“剛”のコントラストを十分に堪能した後、
ゴクリと飲み込めば嚥下に押された香りが鼻腔へ抜けていく。

確かにこの形状のたい焼きは23区方面に多く見られ、
ココでコレを展開する「薄皮たい焼き みづほ」の判断は、
見た目のインパクトも良く全くもって異論の余地は無い。
が、ただ一つ疑問を差し挟むとするならこの形状って、
どちらかといえば“厚焼き”というより“厚造り”じゃないの?

価   格○小倉あん 140円
住   所○東京都青梅市河辺町10-7-1 河辺とうきゅう 2F
営業時間○10:00〜20:00
       不定休(とうきゅうストアー河辺店に準ずる)
 
   
  

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2015年05月16日

ばかうま黄金鯛焼総本家 トピレック店【南砂町@東京メトロ東西線】

     
 
たい焼きを買いに南砂町に来た。

2a出口から出ると目の前には時計が聳え立つ広場があり、
その先から右手へ伸びる細道へ入り、
進んだ先を貫く道路を左へ曲ると南砂三丁目公園脇に出る。
その先にある南砂三丁目公園入口交差点に着く頃には、
目の前に神社の参道の様な TOPYREC PLAZA と記された、
緑色の大きなゲートが見えてくる。
其れを潜り巨大な総合スーパーの横に伸びる、
茶色いレンガの緑道を進んだ先にある、
プロムナード屋外店舗と呼ばれる施設の一画に、
目指す「ばかうま黄金鯛焼総本家 トピレック店」である。

周りを大きな建物に囲まれたこの一画には、
小さな3軒の店が軒を並べている。
各々の店の前にはベンチや縁台の類が置かれ、
其処で既に親子連れが一組、
唐揚げをついばみながら談笑している。
現在の時刻は午前10時前。
既に営業を始めている両端の2軒を他所に、
その真ん中で赤い暖簾はかけられてはいるが、
シャッターは下ろされている店舗からは、
両端の店から漂う香りに負けない位の、
甘くて芳ばしくて温かな香りが漂っている。

やがて店頭のシャッターは上がり、
店内から現れた店員さんが、
手に持った鮮やかな赤い日除け幕を下げる。
其れを開店の合図と勝手に受け取り、
斜向かいにある自転車屋から離れ向かう、
「ばかうま黄金鯛焼き総本家 トピレック店」に店先。
板張りの階段状デッキを踏み締め店頭に立つと、
店内で作業中の2名の店員さんが、
一人は焼き型の前で明朗快活の立ち振舞で、
一人は会計口の前で泰然自若たる面持ちで、
一斉にコチラへ振り返る。

早速たい焼きを注文すると、
当然の品薄状態なのは開店直後の常。
待ち時間を了承して注文を済ませ先に代金の支払い、
ポイントカードに捺印を済ませ渡された後、
大きく開いたガラス窓の横にある白い壁を背にし、
軒先に佇みながら換気扇から勢い良く吹き出てくる、
甘くて芳ばしくて温かな香りを頭から受けつつ待つ。

脳天からこぼれ落ちてくる熱気が全身を包み、
此れで願い事でもすればご利益があるかなとか、
もしあるならば其れは恵比寿様からのご利益かなとか、
愚にもつかない事を考えつつ、
辺りをぼんやり眺めながら焼き上がりを待つ一時。

後方にあるガラス窓の奥に設えられた焼き型は、
店同様に真新しく銀色に輝く6連式が3台。
その横から2面のガラス窓を貫き置かれた保温ケースは、
木製のスタンドが並べられて入るが、
今の所たい焼きは“小倉あん”のみが6尾いるのみで、
店内では店員さん達が慌ただしく商品の準備に追われている。

その光景を見守るように取り囲む大型複合商業施設は、
朝方と云う事で客の大半がベビーカーを押す母と子、
そして買い物カートが標準装備の年寄りの集団という、
今の時代を象徴した新世代交通戦争といったラインナップ。
その両者がレンガの道を進む様は、
目の前に広がる光景とは一致しない程に賑やかしく、
愚図ついた天気を掻き消さんばかりの勢いがある。

そんな日常を眺める視線の端では焼き型が開かれ、
中からほんのりと色黒のたい焼き達が連なってお目見えする。
其れを取り出し一尾づつチョキチョキと切り分け、
さらに丁寧に小分けで袋に入れられる。
其れ等をまとめて袋に入れ手渡された後、
去り際に長いを詫び合わせ礼を述べると、
店内で作業中の2名の店員さんが、
一人は焼き型の前で明朗快活の立ち振舞で、
一人は会計口の前で泰然自若たる面持ちで、
一斉に挨拶を返してきた。

その声に送られた後に荷を解くに適した場所を探す。
西館の下にある小さな広場はベンチもあり、
絶好の場所であるが今は折しも小雨がそぼ降る西砂町。
今やこの広い大型複合商業施設の軒先は、
やおら降り始めた雨を避ける為、
TOPYREC PLAZA 利用客が沢山居る。
特に目を付けていた広場は子供を遊ばせるには絶好の場所で、
既に数組の母子連れが談笑しながら雨宿りである。

なので止むを得ずこの地を諦め他を探す事にして、
その広場の裏側のエレベーター横にある通用口側で荷を解く。
母子連れの横で胡乱な輩が昼前から嬉々として、
アツアツたい焼きを昧る事態は好ましくない。
特にこの手の事例にデリケートな昨今に於いては、
是非とも避けて通りたいシチュエーションといえる。

早速取り出した一尾から伝わる暖かさに、
一時棘ついた心も和らいでいくのが感じられる。
その一流セラピストの様なたい焼きを見て湧く違和感に、
早速過去の“きろく”を引っ張りだしてみる。
今更ではあるが此方は駒込にある、
「ばかうま黄金鯛焼 総本家」の「トピレック店」であり、
頂いたスタンプカードにもそう記されている。

そういった意味でいうと此方のたい焼きは、
駒込の其れと比べて周りを取り巻く余剰部分、
所謂“バリ”の箇所が大きく幅広い。
此処まで来ると最早世間一般で云う“羽根”に近く、
駒込には無い其れはトピレック店としての個性なのか否か、
其れは此の先此の地に永く根付いてから判る事である。
そんな“羽根”から先ずは侵攻して行こうとガブリと歯を立てる。

すると其の分厚く縁取られた帯は、
口の中に入ると途端にガリガリと音を立てて砕ける。
其れを口一杯に受けてからガシガシ噛み砕くと、
ほんのりとした甘味を漂わせてくる。
シットリとした舌触りの“羽根”は、
シンナリした“瓦煎餅”の様な歯応えを醸し出す。
少しばかりの油分を感じながら本体中央部の皮へ齧り付くと、
以外に薄い皮の正面はザラザラした舌触りで、
歯を立て噛み千切ろうとすればニシニシと音を立てる。
其れを越えて更に噛みしめると、
内部はモチモチとした歯応えを発揮して、
其処に生じる弾力も併せ、
当に“皮”然とした佇まいを見せる。

其の中にタップリと入った餡は、
ネットリとして滑らかな舌触りの粒餡で、
強烈な甘さが無い割には、
何時迄も口内にアズキの風味と共に、
長く其の消えない甘さを刻み付けていく。
暫く口内に漂う粒餡の存在感を感じた後、
やがてホンノリとしたアズキ特有のクセを置き土産に、
鼻腔を通り抜けて残る全ての残滓を引き連れて消え果てる。
外側でデカイ顔して主張している皮の存在感に負けない、
其のくせバランスも配慮した所謂“デキる”餡である。

そのモチモチ主張する皮を噛み締めてつつ、
不意に視線を移動するとすっかり雨は上がり、
ベビーカーの一団が移動をし始める。
其処にある小さな視線に気づき、
その視線に応える様に目の前にたい焼きを差し出し、
直ぐ様「ばかうま黄金鯛焼き総本家 トピレック店」を指差す。
この意味と意志を幼子が理解するとも思えないが、
その強い視線と満面に浮かべた笑顔を見て、
明確な意義が生じていると期待しつつ、
未来のたい焼き愛好家の誕生を願い2尾目に齧り付く。

価   格○小倉あん 150円
住   所○東京都江東区南砂6-7-15
営業時間○10:00〜21:00
       年中無休
 
   
  

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2015年05月02日

三國商店【東高円寺@東京メトロ丸の内線】

     
 
たい焼きを買いに東高円寺に来た。

3番出口から出て左折の後直進して、
大久保通りと交わる東高円寺駅北交差点を渡り、
更に直進して辿り着いた折れ曲がった十字路をまたも直進。
それを道なりにひたすらまっすぐ進んだ果てに、
今回の目的地である「三國商店」はある。

その店は全く以て店舗然とした佇まいは無く、
何処までも普通の戸建住宅であり、
細い路地に突如現れる“たい焼”の文字と、
たい焼きのイラストが記された、
程よく色褪せた朱色の幟が無ければ、
素通りしてしまいそうな程、
建ち並ぶ住宅の中にひっそりと息を潜める様にある。

はためく幟に誘われた先はきっとガレージで、
今は清涼飲料水の自動販売機が一台と、
無数のプランターや鉢植えが置かれている。
奥に目を遣るとアルミサッシの窓と引戸があり、
窓には紙製の暖簾が掛けられ、
その下の方に小さく控え目に“OPEN”と表示されている。
そして窓の横には小さな掛け看板に、
白い文字で「たい焼 氷 三國商店」と記されている。
そして更にその看板の奥の壁に縦長の小窓があり、
その小窓に下にカウンターが設けられている。
一方の引戸の方には品書きとしての短冊型の張り紙と、
その横にはたい焼きの説明書きと氷の品書き、
あとは其処彼処に夢の国にいる鼠と、
その取り巻き達の姿が見受けられる。

さて窓に“OPEN”とあるからには営業中なのだろうが、
外から窺える店内というか室内は暗くひと気が無い。
灯りの類が一切ないというのはここ最近良く遭遇するが、
今回の「三國商店」はそれに加えて採光部分が少ないので、
殊更ながらに深く暗い印象がある。
更なるアプローチを試みるべく、
玄関前と思しきスペースへと踏み込んでいくと、
脇に設けられている小窓の方へ視線は引かれて行く。
小窓の前にあるカウンターの隅には紙が貼られていて、
そこにはこう表記されている。

お客様へ
ベルを鳴らしてね!!
(ピンポン) 店主

この手の注意書きとその上にある黒い箱はまさにデジャヴュ。
ならばと早速先週に引き続いて、
インターホンを押しての来店告知をする。
即座に奥からくぐもった感じの返事が返ってきて、
薄暗がりの室内から小窓を開けておじさんが顔を出す。

早速注文をお願いすると生憎の品薄状態で、
焼き上がりまでは少々時間が掛かるとの事。
此れもまたデジャヴュ。
望むところですと了承の後おじさんは、
窓際に3台設えられた6連式の焼き型の前に立つ。
焼き台に佇むおじさんは頻繁に室内奥に向かって、
何やら確認を取っている風な仕草を数回繰り返す。
やがて奥からおばさんが現れおじさんと言葉を交わした後、
おじさんと交代で焼き台の前に立つ。
そんな光景を薄暗がりの室内に眺めながら、
店先に置かれたバラエティ豊かな椅子に腰掛けながら待つ。

しばらくボケッと待っていると、
室内から何かを勢いよく撹拌する音が響き、
それが済むと少し経って小窓から、
生地の焼ける甘く芳ばしい香りが漂ってくる。
もしや今まさに生地を作っているのかとおもいつつ、
そうなれば此れは完全受注生産だなと、
感心しつつ再びボンヤリと辺りを見渡す。

そんな余りある時間の中に於いて、
ひとつ嫌でも無視する事の出来ない記述があり、
それが“谷中名物 たいやき”である。
まさか西日暮里の下辺りにある例の地域な訳も無く、
おばさん曰くこの目の前に通る細い路地は、
今は店も少なくなりほぼ住宅街と化しているが、
今でも高円寺谷中通り商店会という商店街であり、
その谷中という名称もこの通りの両端が坂になっていて、
谷の中にある地形から来ているとの事で、
その谷中の名物としてこのたい焼きがある訳である。

そう教えられるとこの目の前を走る細い路地が経て来た、
栄枯盛衰の歴史を偲んで万感の想いが胸を去来する。
そんな話を聞くと店の前は人通りが意外とあるのも納得だが、
自動販売機を利用しに来た鳶職のお兄さん以外は、
コチラを注視する人はいないのは納得いかない。
こんなにもいいニオイを漂わせているのに、
コチラを注目しないとは何事かと憤慨しつつ、
そんな折も耳には威勢の良い撹拌音が聞こえて来る。
その後の漂う芳ばしい香りに包まれながら、
暇に感けて店先の三脚ある椅子に各々腰掛けてみたり、
店先に蔓延る緑の大群に埋もれながら、
観葉植物と雑草の判別を繰り返す事数分。
ガサゴソと紙袋を用意し始めたおばさんの姿に誘われ、
勢いよく小窓の前に駆け寄ると、
おばさんが袋を差出したい焼きの完成を告げる。
早速代金を支払い長いを詫びた後に店を後にして、
少し先にある中央本線の高架脇のスペースに陣取り荷を解く。

熱気と共に立ち昇る甘い香りが鼻腔を満たす。
手に取ったたい焼きは柔らかくも表面には張りが在り、
焼き目もシッカリついた仕上がり。
早速一口齧ればクシッと音を発てた後に、
表面からはサクサクとした歯応えが伝わる。
その内に在る柔らかな生地はふんわりしながらも潤いがあり、
噛み締めればモチモチとした食感へと変わる。
その折に口内に漂ってくるのは芳ばしい香りとともに、
フワッと漂う甘味と粉の持つ独特の酸味が広がる。
この生地に漂う粉の酸味こそが、
いわゆる駄菓子系たい焼きの特徴といえる。

そんな駄菓子系たい焼きの餡といったら、
当然ネットリとした舌触りで濃厚な甘さを湛えた、
アズキの粒感は消失しているペースト状の餡である。
これもまた王道と呼べる取り合わせであり、
確かにアズキの風味もある事はあるが、
基本的には甘味こそわが命といえる餡である。
厚くフワフワの皮に絡みつく甘い餡。
生地からは粉の酸味が程よく漂う。
それを火傷を拵えながら食べ進み、
最後は尾びれの縁、
硬く焼き上がったカリカリとした部分の、
軽やかな歯応えを楽しんで食べ終える。

確かに高級でも高尚でもではないが、
コレこそ王道駄菓子系たい焼きであり、
子供達が3時のおやつに食べる間食であり、
それを3時に開店する「三國商店」が、
ひとつ110円という安価で提供するというのは、
何よりも健全で何処までも正しい姿である。

かつての商店街の名残を残す「三國商店」が、
自信をもって谷中名物と謳えるのは、
そういった健全な姿勢があるからであり、
このたい焼きが売られ続ける限り、
高円寺谷中通り商店会は生き続けるであろう。
そしてこういうたい焼きをこそ、
たい焼き原体験として、
子供達には食べてもらいたいと思う。

価   格○小倉たい焼 110円
住   所○東京都杉並区高円寺南5-30-19
営業時間○15:00〜
       月曜 定休
 
   
  

posted by EY at 23:53| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 杉並区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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