東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年09月27日

サザエ 上野松坂屋店【御徒町@山手線】

     
 
たい焼きを買いに御徒町に来た。

北口改札を出て春日通り沿いを左に進み、
中央通りと交わる交差点の角に建つ上野松坂屋へ向かう。
地下1階に広がるほっぺタウンの一画にある、
7丁目おそうざい公園のA区画で営業している、
“十勝おはぎ”でお馴染みの「サザエ 上野松坂屋店」へ訪れる。

良く見れば深い焦げ茶色の木目が浮かんだ壁や軒は、
光量の少ない屋内では漆黒に見える。
その黒に浮かんだサザエ食品のエンブレムが、
スポットライトを浴びて白く輝いている。
黒と銀で構成された落ち着いた雰囲気の店舗には、
“十勝おはぎ”や“豆大福”といったお馴染みの品が並ぶ一方、
保温ケースにはまだ商品はひとつも無い。
通路に面したガラス窓の奥を覗いてみると、
生地が流し込まれて色とりどりの餡を乗せた、
「十勝おはぎ」の看板商品“大名焼”がズラリと並ぶ。
その横にある3台のたい焼きの焼き型は閉じられ、
その中にたい焼きがあるのかは確認ができない。

会計口に向かうと直ぐに店舗奥から店員さんが現れたので、
先ずはたい焼きの販売状況を尋ねてみる。
店員さんは焼き台前の店員さんをチラリと見てから、
コチラの購入個数を確認して焼き場と言葉を交わす。
5分程の待ち時間を告げられそれを承諾したら、
代金を払いスタンプカードに判子を押してもらう。

待つ間は買い物客の邪魔にならない場所で、
たい焼きが焼き上がるのを眺める。
6連式の焼き型に流し込まれた生地は真っ白で、
上に乗せられた濃い赤紫をした粒餡は、
焼き型からはみ出そうな位に大量で山盛りである。
その光景を見て“おはぎ”が乗ってるみたいだなぁと、
呑気に感心しているとしばらくしてから、
餡子の上に白い生地がトロリと掛け回される。
白から黒を経てまた白へと目まぐるしい変化の後に、
パタンと焼き型が閉じられ隙間からは白い生地が溢れる。
ジューっと生地が焼ける音が響く中で、
店員さんは“大名焼”を次々焼き上げて行き、
その合間に冷蔵庫から白く柔らかな塊を取り出して、
たい焼きの焼き型へグニグニ成形しながら押し込んでいく。

あれは一体なんだろうと考えていると、
店員さんは閉じた焼き型の周囲に着いた生地を、
ゴリゴリと勢いよくそぎ落とし始める。
周囲全てでそれを終えていよいよ焼き上がったたい焼きは、
バリでひとつに繋がった白磁の焼き物の様である。
それをひとつずつパキパキ折って切り離し、
顔の周辺に付いたバリを化粧裁ちする。
その際に6連式の最初と最後のたい焼きは、
顔では無く尻尾の周囲を化粧断ちしている事に気付く。
単なる目印なのかそれとも深い訳があるのか?
そういった謎に思いを巡らせる色々と想像を膨らませる。
切り離されたたい焼きはスタンドに並べられるが、
並べられた傍から次々に箱へと入れられる。
ズシリと重い袋を受け取って礼を述べる際に、
先程の白いグニグニしたモノの正体を尋ねてみる。
なるほどこれが“パイたい焼き”の素体かと謎か解けた所で、
再度礼を述べてから階段前に設けられた椅子へと向かう。

荷を解くと箱から立ち昇るたい焼きの芳ばしさと、
経木から漂う森の香りが周囲を漂う。
手に取った焼き立てのたい焼きは当然アツアツで、
皮の表面はカリカリしていて硬い指触りである。
型崩れ所か指の沈下すら見せない“殻”の様な焼き上がりは、
齧ってみるとガリッと音を発てて割れる程である。
その割れた所からふんわりと漂う小麦粉が焼けた馴染み深い香りは、
仄かな苦みと共に舌の上にやんわりと広がっていく。
皮は抜群の歯応えの後に細かく砕けて内部の餡子に貼り付いて、
高温を放射する餡子と口内とを隔てる防護壁となる。

焼き立てのままを維持した灼熱の餡子は、
熱と圧で締まったのか中々変容する様子を見せない。
粘度が高く保ったまま塊を維持してコロコロと転げまわり、
その度に口内のアチコチへ衝突してはヤケドを作っていく。
熱気に煽られて充満するアズキの風味と強いがキレの良い甘味は、
口内からやがて鼻腔へと漏れ溢れやがて外へ抜ける。
その際に硬いだけではない皮の芳ばしい香りも、
シッカリと主張をするのを忘れる事はない。

モダンな店構えに硬く研ぎ澄まされた皮を纏った、
大量の餡子を湛えた硬派なたい焼きは、
有名百貨店のデパ地下にあっても変わらない。
抜群の安定と品質を兼ね備えたたい焼きに感心しながら、
最後に残った巨大なバリを豪快に音を発てて噛み砕けば、
“南部煎餅”の様な粉の風味と仄かな酸味が舌を包み込む。

価   格○うす皮たい焼 140円
住   所○東京都台東区上野3-29-5 松坂屋上野店B1F
営業時間○10:00〜20:00
       元日
 
   
  

posted by EY at 21:34| 東京 ☀ | TrackBack(0) | 台東区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月20日

鯛笑【大山@東武東上線】

     
 
たい焼きを買いに大山へ来た。

大山駅南口改札から出ると右手にある踏切の前には、
大きく聳えるハッピーロード大山商店街の入り口がある。
広大なアーケードに入って少し中へ進んでいくと右手に、
お茶屋を挟んで二本ほど建物の奥へ伸びる小路がある。
人が行き交うには少し狭い小径を進んだ先には、
裏庭と呼ぶには少し殺風景な小さな空間が広がっていた。
そこには子供好きのお化けや巨大な猫の妖精は居ないが、
たい焼き屋の「鯛笑」が営業をしている。

小さな間口で全体的に古びた佇まいの建物に、
真新しいが建物との調和がとれた窓口がはめ込まれ、
軒先には「鯛笑」の名前が記された、
白く大きな提灯がぶら提げられている。
店舗正面に設けられた小さなガラス窓の下には、
“小倉あん”を筆頭にたくさんの品書きが提げられている。
窓に面した店内では6連式の焼き型が3台並び、
真ん中の1台ではすべてのたい焼き型に生地が注がれ、
既にふっくらと焼き上がり始めているのが見える。
やがて店先でたい焼きを凝視している客に気づいた女将さんが、
スルスルとガラス窓を開けると途端に店内から、
芳ばしくて甘い香りが一斉に路地裏の小さな広場に漂いだす。
たい焼きの焼ける香りに優しく頬を撫でられる感覚を堪能したなら、
早速店内で身構える女将さんにたい焼きの注文をお願いする。
焼き上がりまで少々時間が掛かるということで、
それまでの時間は商店街の散策に時間を費やす。

のんびり商店街を一周した後に再び「鯛笑」へ赴くと、
焼き型の上にはすっかり形を整えた沢山のたい焼き達が、
上を向いたり下を向いたりと思い思いの格好で直立姿勢で、
焼き型の上に並んでいるのであった。
こちら「鯛笑」のたい焼きは“立つ”たい焼きである。
巷では“厚焼き”や“超厚皮”と認識されている、
つまりはプレーンのたい焼き2匹を用いて餡を挟むたい焼きである。
そしてこちら「鯛笑」のたい焼きもまたそれら超厚皮たい焼きに、
引けを取らない程に立派で重量感溢れる厚みを保持している。
加えてこの焼きたてのたい焼き達には鋭角的な輪郭があって、
一見した感じは宛ら魚形をした“木板”といった感じである。
その“木板”然とした皮の間から餡子がチラリと姿を見せていて、
この商品が木工品ではなくたい焼きである事の証明をしている。

たい焼きが一匹ずつ白い紙の小袋に入れられる間に、
ご店主や女将さんと世間話を交わす。
表通りのアーケードから切り離れた静かで小さな路地裏の空間は、
分厚いたい焼きが醸し出す甘く芳ばしい香りと、
気さくなご店主と朗らかな女将さんが作り出す、
和やかで温かな空気で満たされる。
一抱えになったたい焼きを受け取り重ねて礼を述べ、
昼時の人で溢れるアーケードへ出る。
そのまま向かいのスーパーマーケットの脇にある路地へ入り、
脇に積まれた段ボールを台にして荷を整える。

手に取ったたい焼きは予想以上に分厚かった。
ふっくらと焼き上がった皮の役を担った生地部分は、
膨らんだ中心部分と鋭利な角を持つ縁で構成されている。
視認で想定したつもりだったがその丸みが殊の外厚かった。
この厚みは都内屈指であり必然的にそれは日本屈指となる。
ならばこちらも慢心する事なく精一杯大口を開けて齧り付くと、
たい焼きの周囲を取り囲む硬く焼き上げられた縁が、
ガツンと歯に衝突してゴリゴリと擦れる感触を伝えて来る。
それを次々にガリガリと轟音をたてて砕ていくと、
続いて皮の内部に控えた生地のモチモチとした食感が広がる。

両極端な歯応えの後に甘い香りと粉の風味で満ちて、
一口頬張れば一杯になってしまう圧倒的な皮の中に、
背骨のように身体の真ん中を貫く餡子がどっしりと控えている。
ネットリと滑らかな粒餡はたまに小豆の皮が存在感を示す中で、
甘さ控えめで皮に絡まると最大限に小豆の風味を際立たせる。
ボリューム満点の皮が放つ小麦の風味と甘味と、
アクセントとなる小豆の風味とコクを醸し出す餡子のバランスは、
ホットケーキ的な西洋風の粉物スィーツの王道にみられる、
本体部分とトッピングのバランスに近い味わいがある。

すっかりたい焼き激戦区となったハッピーロード大山商店街に、
新たに現れた日本“超厚皮たい焼き”期待のたい焼き屋は、
細い路地の奥で小ぢんまりとした店先に白く大きな提灯を提げて、
温かな空間をこしらえて心も胃袋も満足感で満たしてくれる。

価   格○小倉あん 140円
住   所○東東京都板橋区大山町32-2
営業時間○12:00〜20:00(金曜のみ15:30〜)
       ※ラストオーダーは19:20まで
       火曜 定休
 
   
  

posted by EY at 23:12| 東京 ☁| 板橋区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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