東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年10月25日

ミュクレバーコア【八王子@中央本線】

     
 
たい焼きを買いに八王子に来た。

北口前のバスターミナルを越えて桑並木通りを進むと、
甲州街道と交わる八王子駅入口交差点が見えて来る。
その角に「ミュクレバーコア」が移転したのだ。
八王子駅入口交差点から左に目を遣ると、
防塵幕で囲まれた旧ダイエー八王子店が見える。
以前訪れたのは2014年01月05日の事。
その時も「ミュクレバーコア」は2階の階段前一帯に、
日夜芳ばしい香りを漂わせていた、
地元の人々に一時の憩いを提供する愛すべき名店であった。
その幾多の買い物客の食欲を刺激し続けた日々も、
2015年2月15日18時に閉店。
多くの「ミュクレバーコア」を愛して止まないファンに見送られ、
ダイエー八王子店の44年と共その歴史を終えた。
ように見えたが実は違っていたのだ。
それから暫く経って同年6月、
歴史が詰まったビルが解体されるのを見守る立地に、
地元民が待ちに待ったリニューアルオープンを果たしたのだ。

タイル張りの建物1階部分に掲げた看板には、
大きな「ミュクレバーコア」の店名と共に、
“ソフトクリーム”“クレープ”“たい焼”“たこ焼”、
そして“焼きそば”というお馴染みのラインナップが並ぶ。
加えてカラス張りの店先を埋め尽くすメニューの品数は、
嘗てスーパーの2階で子供達を虜にした、
圧倒的な煌びやかさを保ちつつも、
また新たな顔を見せて行き交う人々へアプローチをしている。
その店の軒先に吊るされたソフトクリームの模型や幟と共に、
真っ赤な“たい焼”の幟がはためいているのを確認する。
判っていても実際確かめて見ない事には安心出来ないもので、
再出発の地でもたい焼きが売られる事に安堵するのであった。

開け放たれた扉には“営業中”の札が提げられている。
中に一歩足を踏み入れると其処には、
外と同様に数多のメニューが壁の至る所に貼られている。
一画に設けられたカウンターと椅子の存在が、
生まれ変わった「ミュクレバーコア」を印象付ける。
もはやデパートのフードコートでは無く、
人々が此処で憩う事を目的で訪れる店舗としての象徴である。
その店舗「ミュクレバーコア」の厨房には、
お馴染みの顔が今も焼き型や鉄板の前に陣取って、
芳ばしい魅惑の香りを漂わせる品を焼き上げている。
場所が変わってもご店主は今日もダンディである。

そのコンパクトに纏まった厨房はまだ新しいが、
色々な器具や材料などが雑多に置かれている。
その中に何かと好対照なご店主と女性店員さんが納まり、
逐一指導を受けながら作業の指示を遣り取りしている。
入口に立ち尽くし店内を遠慮なしに見回す客を見遣り、
声を掛けて対応を始めるご店主に注文をお願いする。

厨房には黒々とした鉄板とたこ焼き型と今川焼き型と、
そして6連式のたい焼き型が並ぶ。
今の所はたい焼き型にだけ生地が流されている状態で、
すぐ横に置かれたタッパーには既に数匹のたい焼きが並んでいる。
調理場の奥にはジュースとソフトクリームの器具があり、
歩道に面した調理場にはクレープを焼く円形の調理機が置かれ、
その脇には会計台とレジスターが置かれている。
とても見晴らしが良い配置であり、
子供の時に見ていたら恐らく興奮して鼻血が出てしまう光景ある。
そして大人になった今もワクワクしながら見守る中、
焼き上がったばかりのたい焼きは箱詰めされていく。

代金を支払い受け取った箱を提げて、
八王子駅入口交差点に建つ銅像の台座で荷を解く。
蓋を開けると立ち昇る甘く優しい香りと温かさの向こうで、
たい焼きの周りに纏った大き目のバリが目に入る。
場所が変わっても「ミュクレバーコア」のたい焼きは、
たい焼き自体にも厚みがあり当然それに伴い大層な重さもある。
顔立ち自体はスマートでスッキリとした面持な上に、
ギャザーフリルをあしらえた伯爵を髣髴とさせる凛とした姿は、
箱の中で鮨詰め状態になっても尚何処か気品に溢れ、
優雅に佇んでいる様に見えたのだった。

手に持つと少し柔らかいが、
指先に当たる質感はシッカリとした焼き上がりを感じる。
一口齧ってみるとやはり表面の食感はサクサクの歯応えがあり、
それが角のエッジが効いた部分になるとカリカリと硬度を増す。
中の生地部分は柔らかで噛み締めるとモチモチしている。
玉子のまろやかな風味が広がる中に粉の酸味が顔を見せると、
次第に生地はほんのりと甘味を帯びて来るのだった。

餡子は最初の一口目では此れが粒餡とは思えない程、
アズキの皮が見当たらない驚きの滑らかを誇る。
余りの滑らかさにたい焼きをふたつに割って、
アズキの皮が輝きを放つのを確かめた程である。
サラリとした舌触りで居ながらホロホロと崩れ、
粒子の粒が大きいモッタリとした口当たりを持っている。
甘味もしっかりと付いているが引きが良く、
サッパリとした後味で大変潔い仕上げになっている。

八王子の地で永年愛されてきた庶民の名店は、
世代を超えて今も道行く人々を釘付けにする魅力に溢れている。
開店直後の店先には既に人だかりが出来始め、
帰りにたい焼きを買う約束を取り付ける子供の笑顔が眩しい休日。
その視線が今手にしているたい焼きに注がれているのを感じ、
今後も尚八王子の人々に愛される存在であり続ける店で、
たい焼きが愛される存在であり続ける事の確信を得た気になった。

価   格○小倉 130円
住   所○東京都八王子市横山町3-9 豊和本社ビル1F
営業時間○11:00〜20:00
       不定休
 
   
  

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2015年10月18日

一口茶屋 高円寺店【高円寺@中央本線】

     
 
たい焼きを買いに高円寺に来た。

駅北口へ出て左へ進み高円寺北口信号を渡る。
高架に沿って進んだ先にある横断歩道が掛かる道は、
それぞれが商店街へと至る道である。
高架下に入ると高円寺ストリートがあり、
高架を潜った左手奥のアーケードは高円寺palが伸びて、
右手を進んだ少し先には高円寺純情商店街へと至る。
そして真っ直ぐ進めば高円寺中通り商店街へ通じ、
商店街入り口ゲートのすぐ先の、
高円寺ストリートとの交わり口の角に、
小ぢんまりとした間口の「一口茶屋 高円寺店」がある。

平成元年開業の店舗だが、
店構えはそれ以上の歴史を感じさせる佇まいで、
少し薄暗がりの高架下に静かに建っている。
柱や壁は確実に築26年以上は経過しているだろうし、
軒を連ね並ぶ近隣の店舗も同様に古びが表れている。
その古びの中に静かに息を潜めていた店舗も、
今や開店準備が着々と進みいよいよ店先に灯りが燈る。

その頃合いを見計らって店頭に向かうと、
思ったよりも狭い店内に2名の人影が、
僅かな空間を滞る事無くスムーズに行き来をしている。
少し御歳を召した感じのこのおふたりは御夫婦だろうか、
火を扱う現場で特に表立った意思の疎通も無く、
滑らかな移動を繰り返す熟練の姿に目が釘付けになる。
やがて店頭でボケッと突っ立っている客に気付いた女将さんに、
頭上に「一口茶屋」の看板を掲げた、
構造的に正面であろう窓ガラスを開けて対応して頂く。
物腰柔らかな女将さんは焼き上がりまでの時間を告げ、
その旨を了承すると柔和な笑顔のまま準備に入る。

正面の窓ガラスに対面した調理場には、
6連式の焼き型が3台とたこ焼き台が置かれている。
どうやらたい焼き担当は女将さんで、
たこ焼きはご店主が仕切っているようだ。
背後には金属棚と調理台に冷蔵庫があり、
その僅かな隙間を調理器具や材料を持ちながら、
事も無げに行き交っている。

たい焼きの焼き型に生地を落とす女将さんは、
最初は専用器具であるチャッキリを使っていた。
しかし別の焼き型には生地をオタマで掬って、
焼き型に擦り込むように薄く伸ばしている。
そして入れられる餡子もまた、
それぞれが異なる餡切りに入れられている。
その外見は確かに遠目から見ても、
餡子の艶やアズキの粒が残った仕上がりに違いがある。

成程あれが“プレミアムたい焼”というヤツか。
一味違った艶の餡子は“大納言”を使用した特別仕様で、
それを堪能するために皮は薄く焼き上げられる。
何とも手間の掛ったたい焼きである。
薄く延ばされた生地が程よく焼き上げられた、
その上にタップリの極上餡子を乗せ、
更にその上に薄く生地を掛けて焼かれる。
それを見て不意に広島のお好み焼きを想像したのは、
漂ってきた芳ばしいたこ焼きの香りが要因であろう。

次々にたい焼きが焼き上がるのを眺めている間も、
その芳ばしい香りが次々に来客を生む。
大量のたい焼きを注文して去って行く自転車のお兄さん。
買い物帰りのおばさんはたこ焼きを注文後、
店先の縁台に腰掛けてスマホを眺めている。
顔見知りと思しき男性もやって来た。
不意に小さな店の前に出来た人集りに行き交う人々も足を止める。
帰りに買って帰ろうと話し合うカップルに、
父親に何時ぞやたこ焼きを食べた事を語る幼児の姿もある。

その光景に包まれながらやがてたい焼きは焼き上がり、
袋に詰めて手渡してくれた女将さんとご店主は、
やはり少しの言葉も交わさないまま、
プログラム管理された様な滑らかな動きを発揮している。
これはお互いの信頼が築き上げた軌跡なのだろうと、
四半世紀を過ぎて今や商店街の顔となった光景を顧みて、
シミジミと感心しつつ店舗を後にする。

熟練の品を抱えて向かうのは北口駅前のロータリ。
中州にある広場でベンチに陣取って荷を解くと、
熱気と独特の甘い香りが顔を包み込む。
手に取った焼き立てのたい焼きは、
その熱気よりも先ず皮の柔らかさに驚く。
薄黄色を帯びた皮自体の感触はフカフカしているが、
指がたい焼き内部へ沈み込む速度が速い。
そして内部の餡子が柔らかく全体にクニャクニャしている。
きっとフリース生地でたい焼きを造れば、
こんな肌触りだろうと想像する。

齧り付いてみると皮の食感はモチモしている。
粉の風味が真っ先に伝わる位に素朴な味で、
甘味は少なく噛み締めると玉子の香りが優しく漂う。
フワフワの食べ心地で厚みもあり皮の中には気泡も沢山あり、
ここ最近はすっかりご無沙汰の懐かしい感触である。
それに加えて絡まって来る餡子もまた懐かしい食感である。
ネットリ滑らかなペースト状の餡子は、
中でアズキの粒が時々存在を主張して来る時以外は、
粗挽きの漉し餡といった感じで舌に乗っかって来る。
シッカリとした甘味が口内にペタリとくっ付いて、
何時までも漂いながら折々でアズキの風味を思い起こさせる。

高級感やプレミア感は無いが、
此れこそ庶民派たい焼きの真骨頂であり、
フワフワの皮とネットリした餡子を湛えた、
往年の量産型厚皮たい焼きそのものである。
昭和の世に広まったたい焼きブームを支えたのは、
この姿のたい焼きが多かっただろう。
だから時々無性に食べたくなり、
そして思いがけず出会った時に自然と笑顔が零れるのだ。

価   格○小倉 130円
住   所○東京都杉並区高円寺北3-1-17
営業時間○11:00-21:30
       水曜 定休
 
   
  

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2015年10月11日

あんず【鶯谷@山手線】

     
 
たい焼きを買いに鶯谷に来た。

北口から言問通りへ向かい鶯谷駅前交差点を渡って、
そこから先へ伸びる尾竹橋通りを行く。
歩道橋を過ぎて根岸小前交差点を右に折れ、
少し行った所に根岸たい焼き「あんず」がある。

根岸小学校沿いの細い路地は至って普通の住宅街を貫き、
その先にある古き昭和の趣が残る一画へと導いてくれる。
良い具合に枯れた趣が漂う洋食屋をはじめ、
お好み焼き屋や焼き鳥屋がヒッソリ並ぶ軒並みと、
その手前の極普通の住宅街との汽水域にあって、
明るい墨色の板壁の真新しい一軒家の一画に設けられた、
鮮やかに映える鶯色の暖簾には、
まさに杏色の文字で「あんず」と記されている。

開店時間前が迫る店の入り口は今、
ほんの少しだけ下げられたシャッターで隠されている。
薄暗がりの店内では人影が動いているのが見え、
併せて店外までほんのり漂う甘い香りに、
本日の開店準備が進められている事を確信する。

休日の午前11時前を迎える住宅街はとても静かだ。
少し開いた洋食屋の勝手口から漏れる微かな物音と、
時折囀る鳥の鳴き声以外の音は無いに等しい。
そこにポツンとたい焼き屋の開店を待つ輩は、
住宅街の“異物”として申し分無い胡散臭さである。
静かな割に人の行き来が多い細い路地で、
人々の遠慮ない視線を浴びながら待つ事数分、
入り口のシャッターをご店主が上げ切ったのを確認して、
急いで店先へと進みご店主に挨拶をしてから店内へ入る。

ダンディな風貌を湛えたご店主に注文を済ませ、
商品が揃う間にぐるりと眺める店内は、
ここ最近に歴史が始まったばかりの雰囲気が漂う。
調理スペースに揃う器具は新品同様の輝きを放ち、
店内を中央で仕切る腰の高さ位のショーケース内は、
持ち帰り用の箱で一杯に満たされている。
そのショーケースの上に乗る保温ケースの中は、
既に木枠の中で簀子に乗った数匹のたい焼き達が、
比較的スマートで薄ぺったい身体を横たえている。

保温ケースの光を浴びたたい焼きは薄黄金色で明るく、
遠目から見た質感はウレタン素材の見本品の様であり、
蕎麦せいろに乗った“天ぷら”をも連想してしまう。
それ位に淡く大雑把にいえば“白い”たい焼きだ。

一丁焼きの老舗たい焼き屋では比較的“白い”たい焼きは多いが、
それでも薄皮の其処彼処で餡子がはみ出し、
黒いコゲが出来て大小様々な斑点をこしらえてしまう。
しかしココ「あんず」のたい焼きは表面の焼き色が均一であり、
所々に浮かぶ黒い影は皮の厚みにムラが生じて出来た物で、
餡子がはみ出し焼けコゲて出来る強烈な黒さでは無い。

その余りに現実離れした“白い”輝きを放ち、
見る物の目を釘づけにするたい焼きは、
保温ケース横に置かれた焼き台で焼き上げられる。
そこに並んだ2つの6連式の焼き型は美しい銀色で、
少しの焦げ付きや澱みや曇りも無くキラりと光を反射する。
ナルホドこのマッサラな焼き型だからこそ造り得た物なのかと、
今この時にだけに生み出されかもしれない儚く初々しい輝きに、
世間の荒波に煤けた心が洗われる思いがした。

などと1人勝手に盛り上がりミソギを済ませた客をよそに、
ご店主は粛々と商品を揃え終える。
たい焼きの重さがズシリ心地良い袋を受け取り抱き金を支払い、
改めて礼を述べた後に店を出て来た道を戻る。

歩道橋の前にある根岸幼稚園に沿って設けられた、
雨上がりの上根岸公園のベンチで荷を解く。
袋を開けた途端に温かな空気と甘い香りが顔を包む。
そっと手に取るとかなり柔らかい皮の感触が、
フワフワの表面とフルフルの質感を存分に発揮する。
そしてやはり薄い。
この皮の質感でこの薄さのたい焼きとなると、
当然体内に納まった餡子の重さは大変な負担となる。
当初真っ直ぐに箱の中に並んだたい焼き達は、
嫌でも安定姿勢を取る事となり、
結果底部が広がった逆T字型となってしまった。

そこまで柔らかなたい焼きなので、
手に持てば尻尾の先端部は微かに揺れ、
その縁に着いたバリはフルフルと震えている。
指先は皮の下にある餡子の柔らかさまで確認できる。
噛り付いてみるとモチモチとした食感で弾力が強く、
コシがあって少し位力を入れても千切れない。
そして噛み締めると柔らかな甘味の中に、
小麦粉がしっかり存在する王道をゆく洋風の皮である。
これだけおやつ系駄菓子たい焼きの要素を持ちながら、
それでも「あんず」のたい焼きは皮が薄い事は、
この皮の性質があってこそなのだろう。

その皮にしっかり絡み付く餡子はネットリトした粒餡である。
口内に押し寄せてザラザラと舌を擦る感触とは裏腹に、
水分が多くて粘りも強い滑らかな舌触りを発揮する。
そこにハッキリとしているがキレの良い甘味と、
浸み込む様に広がって行くアズキの風味が追いかけて来る。
この汎用性の高そうな粒餡だからこそ、
個性的な皮の特性を損なわず自身の能力も発揮できるのだろう。

柔らかなたい焼きをフルフルと震わせて、
多くの子供が集う施設で幼い歓声を聞きながら食べる一時は、
この鶯谷の地において新たなたい焼き文化の誕生を、
リアルタイムで目撃するという大変貴重で有意義な時間となった。

価   格○つぶあん 150円
住   所○東京都台東区根岸3-11-6
営業時間○11:00〜18:00
       水曜 定休
 
   
  

posted by EY at 21:49| 東京 🌁 | TrackBack(0) | 台東区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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