東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2014年06月21日

おめで鯛焼き本舗 戸越銀座店【戸越銀座@東急池上線】

     
 
たい焼きを買いに戸越銀座に来た。

昇り下り共に改札を出たら目の前は戸越銀座。
左右に見える路地を跨ぐアーケードに掲げた看板が、
線路を境にデザインが変わるその理由は、
戸越銀座でありながら各々が別の商店街である証。
右に折れて戸越銀座商栄会商店街の方を中原街道に向う。
数分後にそろそろ戸越銀座が終わり端が見えてくる辺りで、
目指す「おめで鯛焼き本舗 戸越銀座店」に到着する。

黄色の外壁とオレンジ色の柱を並べた欧風の建物の1階部分に、
毛書体で記された白地の看板を堂々2枚掲げて営業中。
商店街に面したガラス戸部分は簾と障子柄で目隠しされているが、
柱を隔てたガラス窓部分からは調理場の様子が窺える。

店内では揃いの赤いシャツを着た店員が2名作業中だが、
窓はピッタリ締められているのでそこからは注文は出来ない。
ならばと縁台が設えられたガラス戸の方へと赴き、
ガラス戸に貼られた“ブルーベリーたい焼き”に驚愕しつつ、
店内へ入ろうとするその入り口脇に一人のおじさんが立っている。

揃いのシャツを着ていない普段着の姿で商店街を眺めるおじさんは、
チラリとコチラを一瞥すると再び視線を商店街に戻し、
体を半歩後ろに引いて店内へと促してくれる。
特に接客業務を行う事も無く静かに佇むその姿からは、
店舗関係者かは否かは窺い知ることは今の所出来ない。

入店の承諾を得て店内に足を踏み入れると、
向かって右手に“ミニたいやき”が群生しているショーケースがあり、
その上が会計口となっていてそこから調理場が一望できる。

店員はおばさんと青年の組み合わせで切り盛りしていて、
おばさんが焼き台前に陣取り調理全般を取り仕切っている。
青年は会計口そばで受注と品出しと会計を担当しているらしく、
コチラに歩み寄って来て注文を促す。

早速注文をする。
青年が応える。
声は少年だった。
近年の子供は発育がよろしいのでもしや義務教育中やも知れない。

青年改め少年は少々おぼつかないない所が有りながらも、
キビキビとした所作で会計作業を行う。
おばさんはその間たい焼きを焼きながらも、
少年の動向を目端で見て気づいた点はその都度指示を出す。
そのやり取りは年齢差を鑑みて親子の様で、
気が気でならない感じが傍で見ていてもヒシヒシと感じられる。

そうなると入口脇のおじさんの存在である。
この2人どちらかとの関係者か?
それとももしや両名ともの縁者か?
はたまたこの店のオーナーか?

おばさんの遠慮のない物言いといい、
その言動に真摯に従う少年の佇まいといい、
双方ともに“こなれた”感じが伝わってくる。
もしやココは家族経営なのだろうか?
後ろを振り返る。
おじさんは相変わらず商店街を眺めている。

果てなき逡巡を一端止めて調理場を眺める。
焼き台には半身のたい焼きと完成型のたい焼きが、
数尾混在しながら焼き型に横たわっている。
焼き型の前には焼き上がったたい焼きが並べられているが、
その数はあまり多くは無い。

少年は注文を受け各々の場所からたい焼きを選び袋に詰める。
おばさんはそれを見つつ時折指示を出しながらたい焼きを焼く。
客は“ブルーベリーたい焼き”を凝視しながら代金の支払をする。
その間おじさんは一言も発する事無く商店街をただ眺めていた。

取りあえずおじさんにも一礼して店外へ出て、
商店街を駅方向へ戻る道すがにあった曲がり角の奥、
小料理屋の斜向かいの駐車場に陣取り早速たい焼きをサルベージ。
ホカホカと熱を発する一尾を手に取り眺める。

ニッコリ微笑みを湛えた全体的に丸みを帯びた体型のたい焼きは、
これまた丸みが効いた“羽根”未満といえる“バリ”が周囲を纏い、
総合的に柔らかな印象となって焼き上げられている。

その福福たる身体には側面に各々、
“招福”と“昇運”の千社札が貼られている風な表面で、
過剰なまでに縁起が良い仕様になっている。

早速に一口齧ると鼻腔を甘い香りがくすぐる。
皮を口に含んだ途端に洋風な芳香が一杯に広がり、
フワフワの皮から卵の風味が一斉に立ち込めてくる。
その香りを堪能しつつも噛み締めると、
気泡が押しつぶされてそこから更に生地自体の風味がフッと香る。

そんな洋風の皮に包まれた餡は驚くほどに王道。
しっかりと炊かれて水分が少なめのズッシリ重たい粒餡が、
滑らかな舌触りと供に口内に押し寄せてくる。
その粒立ちは柔らかくも確実に存在感を示し、
サラリとした舌触りも優しい丸い甘さを、
餡全体に染み渡らせて嫌味な後味とは無縁の食べ心地。
それが少し押せばはみ出る程に丸い身体に大量に抱かれている。

“笑う鯛には福来たる”
紙袋に記された言葉を今一度たい焼きと共に噛み締める。
縁起を体中に纏った様なたい焼きの慈悲に触れつつ、
それを喰らってしまったら福も何も無いかもと若干不安に苛まれる。

とはいえたい焼きが齎してくれるのは“招福”と“昇運”である。
“招福”は福を招いて頂けるらしいので、
有難く恩恵に与るとして問題は“昇運”である。
運は自前で揃えなければならない感じであるので、
持ち合わせが無い身としてはあまり期待が出来ない。

この際過度な期待はしないでおいてココはひとつ、
この様な上等のたい焼きと巡り合い尚且つ、
腹いっぱいに食べる事が出来る今に感謝しながら、
尾びれの先まで余す事無く完食する。

満足感で一杯になりながら商店街に出て、
はるか向こうまでまっずぐに延びる戸越銀座の先を眺める。
この全長約1.3kmにわたる関東有数の長さの商店街でありながら、
現存するたい焼き屋は「おめで鯛焼き本舗 戸越銀座店」1店舗のみ。
それも商店街の端といって良い位置。

これは「おめで鯛焼き本舗 戸越銀座2号店」を、
商店街の反対端に早急に作るか、
別のたい焼き屋が出来る事を切に願うばかりである。
そしてその店にも座敷童の様なおじさんがいる事を望んでやまない。

価   格○こだわりつぶあん 140円
住   所○東京都品川区平塚2-13-8
営業時間○11:00〜19:00 
       盆・年末年始 定休  
 
   
  
posted by EY at 23:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 品川区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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