東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年11月08日

十勝大名 府中伊勢丹店【府中@京王線】

     
 
たい焼きを買いに府中に来た。
府中駅南口から伸びるペデストリアンデッキは、
再開発事業B地区の上空を覆う回廊となっている。
その先には“ぱるる”と“フォーリス”という、
2箇所の複合商業ビルへ直結している。
向かって左手の“ぱるる”には映画館が、
一方右手の“フォーリス”には府中伊勢丹店が併設されている。
その府中伊勢丹店の地下1階へ降りて、
和洋菓子で満たされたエリアに行くと、
“十勝おはぎ”でお馴染みの、
「十勝大名 府中伊勢丹店」が営業している。

株式会社サザエ食品は近年ブランドの細分化が進み、
都内には3つのブランドが進出している。
以前に伺った「上野松坂屋店」を始めとした「サザエ」と、
今や「エキュート立川店」だけせ営業中の「鯛夢楽」と、
そして都内には2店舗が存在している「十勝大名」である。

店舗の半分を占める大きなガラス窓の向こうには、
6連式のたい焼きの焼き型が2台と、
無数の円筒形が並ぶ“おやき”の焼き型が一台並ぶ。
たい焼きの焼き型が黒く焼き色が付き、
長きに渡り使い込まれた形跡が残っているのに対し、
“おやき”の型はブロンズ風の輝きを保つ飴色で、
焼け焦げやくすみがほとんど無い。

その対照的な焼き型の前では初老の店員さんが、
半身で横たわるたい焼きと“おやき”を見つめる。
商品の確認を済ませた所で会計口へ向かうと、
もう一人店員さんが現れたので注文をお願いする。
待ち時間を確認して代金を支払い、
共通スタンプカードにハンコを押してもらう。
焼き上がるまでは非常階段口へ通じる通路に入り、
面した窓ガラスからたい焼きが焼き上がるのを眺める。

さて「十勝大名」と名乗るからには、
看板商品は勿論“十勝大名おやき”であり、
中の餡は数種類を揃えてある。
加えてコチラも定番の“十勝おはぎ”や、
言わずもがな“豆大福”等の和菓子も店先に並ぶ。
一方たい焼きはといえば2種類だけの品揃えで、
今流行りのデニッシュ生地と通常のたい焼きがある。
しかしその“十勝大名鯛焼き”と銘打たれた、
一見普通のたい焼きに込められて熱量は、
他のブランドはおろか数多あるたい焼き店にも負けない、
たい焼きに注ぎ込める可能な限りの要素を、
一斉に盛り込んだ一品となっている。

先ずは“薄皮仕立て”と銘打たれた皮である。
ここ最近はたい焼きのチェーン店でも、
連式のたい焼きも薄皮で焼かれる事が多い。
その皮はパリパリの歯応えで焼き上げられ、
フカフカの厚い皮を探す方が難しい傾向がある。
そういった意味で「十勝大名 府中伊勢丹店」の皮は、
外から見た限りでは柔らかそうである。

その一方で所謂“羽根”の類は付いて無く、
自信の鯛型をクリアに表現した伝統的フォルムでいる。
そこにサザエ食品自慢の“つぶあん”に加えて、
何と“普通”でありながら“白玉”が加えられるのだ。
過去にもたい焼きの中に“白玉”が入った物はあるが、
その全ては何かしらの慶事が関係していた。
しかし「十勝大名 府中伊勢丹店」は平時で“白玉”入りである。

成程これは毎日が誰かのアニバーサリー・デイという事か。
毎日がめでたいたい焼きを丁寧に焼き上げる店員さんも、
白く輝く“白玉”を優しく慎重に餡子の上に載せて行く。
そして徐に焼き型をバタンと閉じ併せた後の数分後、
美しい焼き色の少し小振りで愛らしたい焼きが現れる。

手渡された箱に店員さんが次々たい焼きを入れてゆく。
隙間無く並んだたい焼きを満足げに眺め蓋を閉じ、
会計口で待ち受ける店員さんへ渡す。
その流れの端で待ち受けてたい焼きを受け取り礼を述べ、
フロアの端にある駐車場連絡口前へ向かい、
そこで営業中のジューススタンド前のベンチへ向かう。

既に買い物疲れを癒している人々に混じり荷を整え、
立ち昇る蒸気の出迎えを顔面一杯に受け止める。
手に取ったたい焼きは柔らかく、
キツネ色の焼き目がシッカリ付いて甘い香りが漂う。
たい焼きの角に至るまでトコトン柔らかな口当たりで、
フワフワのたい焼きに噛り付くと口には粉の風味が広がり、
中から吹き込む熱気と共に玉子の優しい香りが押し寄せる。
薄く焼き上げられた皮は表面に着いた焼き目も合わせ、
とてもモチモチした食感を湛えた焼き上がりだ。
中の生地は花が咲くようにフンワリ広がり、
気泡の一つ一つからフワッと仄かで甘い風味が漂う。

餡子は定番たる粒餡がミッチリ入っている。
アズキの風味が濃厚に盛り込まれた「十勝大名」の代名詞が、
モッタリと重たく口の中に転がり込む様に侵食して来る。
途端に口内はキリッとした甘味で染め上げられ、
豊かなアズキの風味と共に舌を包み込む。
中に潜んだ“白玉”は華麗に餡子と一体化を果たし、
隠し味の様なクニクニの食感を与えてくれる。
それは甘味も海に浮かぶクラゲの様な淡い存在感で、
気が付いた時には既に深く静かで甘い海の中へ消えてゆく。
其処にアズキの種皮が奏でるシャキシャキの歯応えと、
アズキ本体のサラリとした舌触りが繰り返される。
やがて強い甘さは幾度かの嚥下を繰り返した後に、
いつの間にかサッパリと引いて行き、
口内にはアズキの存在感だけシッカリ残して去ってゆく。

数少ない「十勝大名」ブランドが押し出すたい焼きは、
パリパリの歯応えを持つ皮や派手な羽根は付いていない。
しかし正統派の姿に隠された内側には、
他と変わらぬ情熱と他には無い強烈な個性を秘めていた。
何気ない休日を晴れの日に変えてくれるたい焼きが、
今後も日本中に増えて行けばこれ程素晴らしい事も無い。
そんな事を夢見ながら手にした2匹目を注意深く見つめ、
餡子に紛れて判断が付きにくいお宝を探す事にしよう。


価   格○十勝大名鯛焼き 130円
住   所○東京都府中市宮町1-41-2 B1
営業時間○11:00-19:00
       不定休(府中伊勢丹に準ずる)
 
   
  

posted by EY at 21:29| 東京 🌁 | TrackBack(0) | 府中市のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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