東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2016年01月17日

たい焼き 増田屋【新中野@東京メトロ丸の内線】

     
 
たい焼きを買いに新中野に来た。

3番出口の目の前を横切る青梅街道から、
右手を見れば意外に広い鍋屋横丁交差点が見える。
その反対側の高円寺方向へ青梅街道沿いを進むと、
最初の左折路に差し掛かる頃合いから、
はためく白い幟が目に飛び込んでくる。
墨文字で書かれた鯛にイラストと“たい焼き”の文字が、
目指す「たい焼き 増田屋」に到着したことを告げる。

白いタイルの聊か古びたビルの1階にある店舗はまだ真新しい。
店舗の頭上には間口一杯に広がった白くて大きな行燈型看板に、
太く力強い文字で記された屋号を記し掲げている。
店舗は間口の半分づつが白色と茶色の2色で構成されていて、
向かって右側の白はガラスの引き戸の枠で、
ガラス面にある店内での飲食が可能と記す文字の白と併せ、
掛けられた暖簾の赤色とのコントラストが目に映える。
向かって左の茶色は対面販売の場所であり、
茶色い板の腰壁とその上に開いた黒い枠のガラス窓がある。
頭上に設けられた庇と腰壁にある小さなカウンターに、
この店からの心遣いを感じ不意に笑みが零れる。

そのガラス窓に貼られた品書きは4つ。
つらつらと品書きを眺めていると店先のガラス窓を開け、
初老の紳士が店内を伺ってから注文を始めた。
直ぐにその後ろに続いて順番を待ち、
購入を済ませた振り返った老紳士と挨拶を交わし、
続いてたい焼きの注文をお願いする。

店内には赤いキャップを被った店員さんが1人、
焼き型の前に立ち目を配りながら接客をする。
窓口から見える保温ケースにはたい焼きが数匹見える。
店員さんは数を確認してから希望購入数が揃うまでの時間を告げ、
客側はそれを了承して改めてお願いをする。
それでは焼き上がりまで店内でお待ちくださいと誘導され、
お言葉に甘えさせて頂こうと店内へ入る。

奥行きのある店内は中央にあるカウンターが仕切る。
調理場は奥にある巨大な銀色の冷蔵庫以外は簡素に纏まっている。
まだ壁や調理器具などの金属類には曇りが無く清潔感に溢れていて、
店舗奥に置かれた胡蝶蘭も元気に咲き誇っている。

入口近くに置かれた大きな保温ケースには、
オレンジ色の明かりが煌々と灯り見ただけで温かである。
中に入ったたい焼き達は餡ごとに纏まり、
アッチコッチ思い思いの方向を向いている。
保温ケースの正面に貼られた品書きには小さく原材料が記され、
お馴染みの材料である“小麦”や“アズキ”等に加え、
“山芋”という表記がある事に気付く。

小麦粉の生地に“山芋”といえばお好み焼きでよく目にするが、
たい焼きの生地に配合されている事を表記してあるのは初めて見る。
其れが一体どの様な効果を発揮するのか楽しみな一方で、
コスト面でどうなのかと大きなお世話まで焼いてしまうのであった。

その横には「たい焼き 増田屋」が使用するこだわりの素材である、
コクと風味が豊かさな“北海道産エリモ種の小豆”や、
3年連続どこぞで金賞を受賞した“鬼ザラ糖”の説明書きがある。
そのまま目を右へ移せば香味自慢の“ほうじ茶”が置かれていて、
其れをセルフサービスで頂ける旨が記されている。

そんな説明がされている紙が貼られたカウンターの腰壁は、
板と板の隙間が開いた垣根の様な作りである。
その至る所に今流行りの“SNS”等の張り紙や、
たい焼きの食べ方から導かれる性格判断等が貼られている。
早速ほうじ茶を頂きながら壁側に設えられた縁台に腰掛け、
何の気なしに性格判断を始めてみる。
しかし解答欄に特に拘りは無く時と場合によって変わる、
所謂“気まぐれ派”が無い事に気付き軽くショックを受ける。

その後は細く洋楽のヒットチャートが流れる店内で、
縁台に浅く腰掛けてほうじ茶を啜り、
調理場で揺れる赤いキャップを眺めたい焼きを待つ。
やがて満を持して6連式の焼き型は開け放たれ、
勢い良く飛び出したたい焼き達が行儀よく板の上へ水揚げされる。
一つ一つ丁寧に周りに着いたバリを化粧裁ちされると、
互い違いの向きで並べられ次々と箱へ詰められる。

紙袋に入れられたズシリと重いたい焼きを受け取り、
代金を支払い長居を詫びて挨拶を交わす。
続いて来店した御婦人と入れ違いて店外へ出て、
御婦人が発した“つぶあんふたつ”の声に送られ店を後にする。

青梅街道を中野通りを目指し歩いて行く。
目指す杉山公園では“子供もちつき大会”が催されていて、
文字通り子供でごった返す公園の邪魔にならない隅っこで、
ひっそりとしていながら見せ付ける様に荷を解く。

手に取ったたい焼きは思いのほか弾力がある。
シッカリ焼き固められたガリガリの指触りを湛え、
柔らかさがあるが型が崩れる様な感じの無いた焼き上がりである。
角の隅々までキッチリ焼き上がったシャープな姿は、
恰も新鮮さを表現しているみたいである。

一口齧ってみる。
パキッと音を発てて皮の表面が割れる。
しかし其処には抜群のコシが備わっていて、
噛み締めるとクニクニとした噛み心地と、
キシキシとした歯応えが発揮されて顎を包み込む。
繰り返される咀嚼は皮から玉子由来の、
甘く柔らかい風味を引き出す。

しかし本当に最近の連式たい焼きの皮は、
驚く程の見事さで皮を薄く焼き上げるモノだ。
などと感心して更に一口喰らい付くと、
皮の内側からまたモチモチとした異なった食感が表れる。
柔らかく程よく潤いを湛えた生地は透明感があり、
一般的なフカフカしたパンケーキ系とは明らかに一線を画している。
もしや此れが“山芋”の効果なのだろうか?

一方たい焼き内部にシコタマ詰められた餡子は、
滑らかで豊富な水気を含んでいる。
ネットリと皮と舌に絡みついて口内に広がり、
控え目で優しい甘味と豊かなアズキの風味を振り撒いて行く。
まるで漉し餡の様な舌触りの中で、
微かに舌を引っ掻くアズキの皮が存在を主張する。

餡子の上品な味わいと皮のモッチリした歯応えといえば、
和菓子の基本中の基本である“薯蕷饅頭”を思い浮かべる。
新中野に表れた新進気鋭のたい焼きは、
図らずも和菓子の原点への回帰を果たす事になった。

矢張り大事なのは基本であるなと、
子供達で賑わう公園でジックリとたい焼きを味わう。
時々注がれる視線を感じる最中も目の前で繰り返される、
此方も和菓子の基本である搗き立ての餅が発する、
米の風味との鬩ぎ合いの中に身を置く事の幸福を噛み締める。

価   格○つぶあん 150円
住   所○東京都中野区本町4-45-9 第一カワイビル101
営業時間○11:30〜20:00
       月曜 定休
 
   
  

posted by EY at 21:46| 東京 ☔ | TrackBack(0) | 中野区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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