東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2016年02月08日

横浜くりこ庵 京王府中ぷらりと店【府中@京王線】

     
 
たい焼きを買いに府中に来た。

北口改札を抜けて右手へ向かい進むと、
目の前には控え目な照明に照らされた空間が広がる。
頭上には光り輝く“ぷらりと”という文字が掲げられ、
その横に京王府中ショッピングセンターとある。
いわゆる駅ナカという商業スペースへいざ乗り込もうと、
進んだ入りっ端に煌々と白く輝く行燈看板が目に飛び込む。
お馴染みの力の抜けた白い鯛のシンボルが出迎えてくれて、
瞬く間に「横浜くりこ庵 京王府中ぷらりと店」へ到着である。

時刻は午前10時前。
目覚め始めたショッピングセンターの薄暗がりの中で、
この「横浜くりこ庵 京王府中ぷらりと店」からは温かな灯りと、
たい焼きが焼き上がる甘い香りが漏れ店の周りを包む。
その周りがほんのり暖かく感じるのは、
自分がたい焼き好きだからという訳だからでは無かろう。

店舗は既に営業を始めている。
白い幟がゆれて駅を行き交う人々を招き寄せる。
親子連れやカップルが次々に店舗へ誘われ、
次々にたい焼きを買い求める光景を眺める。
選びあぐねて店先に佇み店内を覗きこむ少年や、
店頭を絶叫しながら引き摺られ横切る幼児の姿もある。
様々な人々の一日がたい焼きと共に始まる。

コンパクトに纏まった店内は重厚感溢れる和の装いで、
黒く太い外柱の奥には木格子の垂れ壁が仕切られている。
白と小豆色に入り組む木肌色が落ち着いた空間を作り、
調理場の中では女性の店員さんが二人で切り盛りしている。

開店直後だが客足は途絶えず次々やって来る。
先客に着いて順番を待つ傍では、
いまだに少年が財布を握り締めながら熟考を重ねている。
先客の肩越しに見える保温ケースには、
各餡を抱えたたい焼き達が行儀よく並んでいる。
調理場の奥では次々にたい焼きが作られている。
ガラス窓の前には6連式の焼き型が5台並び、
その全てに落とされた生地がふっくら焼き上がっている。
もしや少年はたい焼きの製造工程が目当てか。
振り返って見た少年は少し爪先立ちながら、
視線は焼き型と保温ケースを行ったり来たりを繰り返す。

小さな同好の士を見つめる間に先客は購入を終え会計口が空く。
少年を促してみるがまだ決定には至らぬらしい。
ならばお先に失礼と会計口に立ち注文をお願いする。
商品を待つ間に調理場を見渡すと会計口の横、
調理場への入り口脇に聳え立つ空のケースを見る。
季節限定のたい焼きを保管するケースにたい焼きの姿は無く、
鉄色の台が並んでいるだけの空間である。

そうか少年は期間限定のたい焼きを待っているのかと、
振り返ると少年はいつの間にか後ろに着いて並んでいた。
つま先立ちをしているのか少しふら付いた感じで、
保温ケースに並んだたい焼きを眺めている様子である。
漸く決まった事への満足感か少し笑みを浮かべた風に見えたが、
ニット帽にマスク姿の少年が本当に笑っているかは、
薄暗がりのショッピングセンターでは窺い知る事は出来なかった。

商品の用意が整った事を告げる店員さんの呼びかけに応え、
代金を支払いつり銭とスタンプカードを受け取り、
各店舗ごとにスタンプカードが溜まって行く事に憂いながら、
其れもまた貴重な記録となると鼓舞しながら商品を受け取る。

礼を述べ会計口を去る。
入れ替わりで注文をする少年が尚もつま先立ちをする後ろ姿に、
彼の絶える事無いワクワク感がひしひしと伝わって来るのだった。
少年が何の餡を頼んだのかは確認しなかったが、
トレーに出したスタンプカードは常連の証であろう。
たい焼き選びにあそこまで熟考を重ねる少年が、
この先も末永くたい焼きを愛好してくれる事を切に願うばかりである。

さてすっかりいい大人のたい焼き好きは南口方面へ向かう。
陽射しが降り注ぐ窓から南口市街地再開発事業計画の聳え立つ、
2台の巨大クレーン車を眺めながら荷を解く。
経木に包まれたたい焼きは王道の厚皮で仕上げられ、
表面の焼き上がりは日干し煉瓦を思わせる風合である。
ゴツゴツした焼き上がりは内部に秘めたフワフワの食感を引き立て、
所謂昭和の駄菓子系たい焼きの正統なる後継者的な風格を具える。
その皮の厚みは比例してたい焼き自体の厚みを作り出す。
目を見張る程に大口を開けて頭からたい焼きに噛り付くと、
ほんのりと甘味と玉子のまろやかな味わいが口内に広がる。
フワフワだった生地は噛み締めるとモチモチに変わり、
噛む度に粉からの僅かな酸味が入り混じりあい絡み合う。

ぶ厚いたい焼きは食む度に側面の継ぎ目から餡子が進攻して来る。
アズキの皮がシッカリ食感として残る正統派粒餡ながら、
舌触りは滑らかで食べ口はとても優しく緩やかである。
芯のある甘味にアズキの豊かな風味が加わり、
タップリと口内の隅々に浸透して行き交う。
皮と絡んで甘味と風味が粒餡の中に潜んでいた熱気に煽られ、
鼻腔を抜ける頃に一纏まりとなり喉を通り過ぎて落ちて行く。

激動の時代を支えた厚皮のたい焼きに噛り付きながら、
あの頃と変わらないのはケヤキ並木と神社の杜位なモノだと、
変貌する街並みを眺めノスタルジーに浸る一時だった。


価   格○小倉あん 126円
住   所○東京都府中市府中町1-3-6
       京王府中ショッピングセンター 2F
営業時間○10:00〜21:00
       年中無休
 
   
  

posted by EY at 22:10| 東京 ☀ | TrackBack(0) | 府中市のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/433577335
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。