東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2014年04月12日

しみずや【大岡山@東急目黒線】

     
 
たい焼きを買いに大岡山まで来た。

駅前のロータローは大きな三角形に切り取られ、
その端切れの各角から道がほつれた糸の様に伸びている。
駅から見て一番奥の角から大岡山北本通り商店街は始まり、
住宅と商店が混在した街並みが連なっている。

その道をひたすら歩き、途中のニセ焼き栗をやり過ごし、
さすがに一抹の不安が脳裏を過り、
これは道を間違えたかなと怯えだす頃に、
幻のごとき白い幟を立てた「しみずや」に到着する。

今や絶滅危惧種となった“白いたい焼き”の幟が郷愁を誘う。
古い住宅の一階部分は営業中でいて店内は薄暗く、
凡そ物販の雰囲気を感じさせない簡素な店先の軒先には、
白い文字を染め抜いた臙脂色の暖簾が掛けられ、
『冷凍ミニ たい焼 しみずや』の文字が風にそよいでいる。

アルミサッシの引き戸を開ける。
入り口脇には一人崖の皮張りの茶色いソファ。
その横から延びるカウンターの上やレジの脇、
店舗奥の商品棚に並べられているのは数々の駄菓子や日常品。
その奥でおばさんが商品の補充に忙しい。

その反対側の壁沿いに大きな冷凍庫がひとつ。
一般的な商店ならばアイス等の氷菓子が入っている所に、
半透明ビニール袋に入れられ、たい焼きが入っている。
5色のミニたい焼きと今川焼と通常のたい焼き(大)が、
カゴで区分けされて、暖簾に偽りなしの冷凍状態で眠っている。
この一点に於いて「しみずや」は間違いなくたい焼き屋である。

半透明のその向こうに見えるボディの色が、
図らずも“白いたい焼き”の今現在に己が置かれている立場を、
如実に表す様に淡く儚い情景が物悲しく、
見る者の涙を誘う。

そんな彼らを早く引き揚げてあげたい衝動に駆られ、
冷凍庫の前であたふたする姿を見かねたおばさんが、
その上に置かれたトレーとトングを指し示す。
手荷物をソファに置かせてもらい、
トレーとトングを手に持って冷凍庫のガラス戸を押し上げる。
溢れ出す冷気とビニールを掻き分けて、
凍えるたい焼きを次々とトングでつまんで引き上げる。
その光景はまるで遠洋漁業で捕えたマグロを、
船倉の冷凍庫からクレーンで吊るして運び出す光景の様。

そんな大げさな事を考えながらトレーに次々たい焼きを並べる。
白いたい焼系のカラフルな一群の体長は約80oとやや小さめ。
極寒で凍らされた身体はトレーに当たる度にカチカチと音をたて、
釘は打てなくても十分に鈍器として役に立つ程に固い。
たい焼き(大)は約120oあり形状もグリップが効いて握りやすい。
いざとなれば非常食にもなる事も鑑みて、
寒冷地の特殊任務に携帯するのに最適の存在である。

引き上げたたい焼きをレジへ持っていく。
店内で温めてその場で食べる事も可能の様だが、
せっかくなので凍ったままを持って帰る。
手早くビニールに詰めてテープで閉じたおばさんは、
かなり大雑把な調理法を伝授してくれる。
こちらも想定内の解凍方法なので別段齟齬もなく理解する。
会計を済ませおばさんに礼を言って店を出る。

普段なら熱々のたい焼きを、
何処かの空き地や路地裏で早速一口といく所だが其れも無く、
物足りない気分を抱えて少年サッカーの集団と供に駅へ向かう。
気温も上がってきた午後2時過ぎ。
冷凍たい焼きの接地面から伝わる冷気が脚にまとわり着く。
胃と心に空いたどうしようもない不足感と、
脚から広がる肌寒さを解消すべく立ち寄るはニセ栗の焼き菓子屋。
一先ずホクホクと小腹と心を満たして帰路に付く。

帰りついたら早速に解凍・焼き上げ作業に勤しむ。
長年の経験則に基づいた数値でオーブンレンジを駆使して、
最良の状態に仕上げたアツアツのたい焼き(大)を一齧り。

角ばった体型の箱型たい焼きの皮は、
外側はカリカリの歯応えで内側はモチモチの食感。
黄色味に強い生地がタップリと詰まっているが、
風味は冷凍による酸味が若干感じられる。
それは、いわゆる粉の風味にある酸味とは明確に異なる物である。
そのモチモチの皮に包まれた餡はベタリと甘々で、
ネットリと皮と舌に分け隔て無く絡んでくる。
小豆の香りは微かに残る程度に減退してはいるが、
味は市販の冷凍あんまんと同等に感じられる。

駄菓子系たい焼きとして立派なモノである。
そして、絶滅危惧種の特別保護区として必要である。
いつまでも白いたい焼きと出会える店であって欲しい。
何せ時々食べたくなるので。

価   格○たい焼(大) 80円
住   所○東京都目黒区大岡山1-3-5
営業時間○14:00〜18:00
       不定休
 
   
  
posted by EY at 23:46| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 目黒区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月23日

寿々屋【祐天寺@東急東横線】

たい焼きを買いに祐天寺に居る。

今度は目黒通りを目指す。
とにかく目黒四中交差点か、
巡る消防署に向かい歩く。
その両方の中間位に「寿々屋」はある。

紺の暖簾と青の軒。
調べてみたら“あやめだんご”というのは、
甘い団子の総称の様で、
店頭にも色とりどりの串団子が並んでいる。

店先の人集りを見計らって並ぶ。
赤いたい焼きの暖簾の下の小窓から見えるたい焼き。
次々売れていき在庫が無くなると、
お婆さんが次々焼いてゆく。
注文をして次が焼き上がるまでの間、焼き台を眺める。
定番の時間潰し。

お婆さんの作るたい焼きは『ラフ』である。
この『ラフ』は『雑』と言う意味ではなく、
着物などで言う『崩し』に近い。

ザッと生地を流す。
トンっと餡を置く。
パンっと合わせる。

一つ一つの所作がシンプル。迷いがない。
そして出来上がるたい焼きは、
陶芸で言う所の『枯れ』た風合。
たい焼きを受け取る際に、
待たせたねと、こしあんの串団子を一本おまけしてくれた。
恐縮して受け取り店を後にする。
見ると店頭に並んでいた団子がほ売り切れていた。

早速に手に取って見ると素朴な風貌。
素焼きの茶碗の様な手触りと、
明るいクリーム色の皮にうっすら焼き目が付いている。

そこから立ち昇る洋風の香り。
乳脂肪か其れに模したナニかの香り。
和洋入り混じりのたい焼きを一口。

表はカリカリと芳ばしく、
中はフワフワと軽い食感。
これはホットケーキに近い。
そこに団子屋さんの優しい餡が乗っかってくる。
名古屋名物の小倉トーストって、こんな感じなのかも知れない。
などと思い耽る、最寄駅の選択に迷う初冬の祝日。

価   格○あんこ 130円
住   所○東京都目黒区中町1-25-20 鮨八ビル1F
営業時間○11:30〜20:00
       月・日曜 定休
       


posted by EY at 22:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 目黒区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月01日

銀鯛【中目黒@東急東横線】

たい焼きを買いに中目黒に来た。

山手通りを五反田方面へ向かう事約7分。
ラーメン屋や焼肉屋の軒を並べる先。
ビルの脇に入る小道に面して「銀鯛」はある。


店舗が大通りを向いていない事も驚くが、
凡そ店舗とは思い難い窓がひとつ。
店内も狭く店内は一人。店先には軒も無い。
その窓の下には椅子が数脚。
重ねて言うが軒は無いので日差しや雨はしのげない。


たい焼きの他にたこ焼きも販売していて、
メニューも豊富な中、あんこのたい焼きを頼む。
休日の脇道は人通りも無く、
一人ポツネンと焼き上がりを待つ事数分。


小さい。
たい焼きが事の他小さい。
その全長約8cm。
しかし人形焼の類と違い、造形は立派なたい焼き。
食べてみると卵と牛乳が香る皮と、
その皮に負けないあんこの風味。
何よりこのサイズで通常のたい焼きの如く
頭から尻尾まであんこが詰まっている。
縁からあんこがはみ出る程に。


味は申し分無いが、惜しむらくは値段設定と大きさ。
一般的な14cm位で出来上がったたい焼きを
出来たてのうちに齧り付きたい。
そんな欲求に駆られる。
 

価   格○あんこ100円
住   所○東京都目黒区中目黒3-5-8 山源ビル 1F
営業時間○11:00〜19:00 不定休


posted by EY at 23:44| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 目黒区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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