東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年11月15日

鳴門鯛焼本舗 四谷3丁目店【四谷三丁目@東京メトロ丸ノ内線】

     
 
たい焼きを買いに四谷三丁目に来た。

3番出口から向かった先は目の前には、
新宿通りと外苑東通りが交わる四谷三丁目交差点がある。
左手を見ると遠くには新宿御苑の樹木が見える。
其処を目指して進むとやがて辿り着く左折路の先に、
一丁焼きのたい焼きチェーン店でお馴染みの、
「鳴門鯛焼本舗 四谷3丁目店」がある。

開店間際の午前10時の日曜日。
悪天候も重なり新宿通りの歩道は人通りが少ない。
新宿通りに面した軒を連ねた細長い建物群の中で、
可能な限りの種類を集めた看板を一斉に掲げ、
道端には幟や行燈看板を設えた店舗がある。
その軒先から伸びた庇部分には木製看板と瓦屋根で、
存分に彼の「鳴門鯛焼本舗」的印象を醸し出している。
比較的新しい筈だが抜かりなく古びている店は今、
半分だけ上げたシャッターを全開にして、
本日の営業開始を高らかに告げる。

漆黒の壁と濃い焦げ茶の木枠で縁取られた壁面と、
長い暖簾が提げられた大きく開いた窓が現れる。
オレンジ色の明かりで満たされた店内には、
店員さんが1人で焼き型の準備に忙しい。
ガチャガチャと響く焼き型の転がる音を聞きながら、
店先に近づいて焼き台の上にある網を見る。
開店直後だけあってたい焼きの姿は見当たらない。
そのまま会計口へ行き店員さんへ注文をお願いする。

焼き上がりまでの時間を確認後に代金を支払い、
新宿通り沿いのガードレールに腰掛け作業を眺める。
注文を受け直ぐ店員さんは焼き台へ向かい、
置かれた全ての焼き型の確認をする。
其処から選び出した焼き型へ生地を丁寧に乗せて、
次に餡差しから掬い取った餡子を手際良く置き、
更にその上へ生地を乗せ焼き型を閉め焼き台へ戻す。
その一連の作業は少しの澱みも無く流れる様に行われ、
次々入れ替わる焼き型たちが奏でる衝突音が歩道へ響く。
開店して間もない店でありながら、
その手捌きに澱みは無く完成された“型”其の物である。

やがて歩道には人出が増え始める。
軒を連ねる商店や店舗は店先の掃除を始め、
駅から出て来た人々は緑豊かな国民公園の方向を目指す。
その道の途中にあるたい焼き屋は宛ら、
街道沿いで旅人に憩いを与える旅籠か茶屋である。
高らかに響く音はやがて道を行き交う人々の視線を集め、
追って漂い始める芳ばしい香りは店先へと足を誘う。

やって来たカップルは相談を経て注文を済ませると、
来た道を戻りコンビニで時間潰しを計ると見える。
複数の家族連れの集団は視線で確認後に、
帰路での購入を検討しながら去ってゆく。
幼い子供は音と香りに興味津々となり、
その横で母親はたい焼きという食べ物の説明を始める。
ポケットの小銭を確認しながら視線を向ける旦那と、
購入は帰り際で良いと手を引き諭す奥方の後姿を見送る。

経験上開店直後のたい焼き屋周辺で興味を示す際に、
此処「鳴門鯛焼本舗」の様な純菓子系たい焼き屋も、
“お好みたい焼き”等の食事系たい焼きを扱う店も、
大概は皆一様に本来の目的を済ませた後、
改めて購入を検討するケースが多い物である。
確かに時刻は朝の10時過ぎであり、
一般的な間食にしては少し早い時間帯である。
それでも購入意欲をそそらせるたい焼きという存在に、
味来に向け大いなる希望の光を見出した気分になる。
そんな事を考えながら遠くに見える豊かな緑を眺め、
一丁焼きの焼き型が奏でる心地よい音色に耳を傾ける。
そして漂う芳ばしい香りに身を委ねながら改めて思う。
四ツ谷には一丁焼きが良く似合うと。

やがてたい焼きが焼き上がる。
愛らし箱に詰められたたい焼きを受け取り、
長居を詫びつつ礼を述べ店を後にする。
駅へ戻る手前の右折路へ入り直ぐ現れる左折路を進み、
途中にあるコインパーキングで荷を整える。

手に取ったたい焼きは立派な尻尾を持った、
つるりと丸い顔つきで見事なキツネ色に焼き上がっている。
皮の指触りはカサカサと乾いた感触で、
そっと持たないと簡単にヒビが入ってしまう位に薄い。
噛り付くとサクサクと軽い歯応えで砕けて、
生地からほんのりと甘味が漂い出す。
一方内側は蝋細工の様な透明感を保ち、
水気もあって潤いも豊富でモチモチの食感を湛えている。
パリパリとモチモチのコントラストが終始続き、
尻尾の先に至るまでその食感が曇る事は無かった。

餡子は粒餡で水気が多くサラリとした口当たりで、
アズキの粒感がシッカリ残っている。
だが口に入れて押し潰すと簡単にぺしゃんこになり、
後には滑らかな舌触りとアズキの種皮が奏でる、
シャキシャキした歯応えがあるだけである。
甘味はシッカリ付いていてアズキの風味も豊かに香る。
口内で何時までも残る優しい後味と鼻腔を漂う残り香が、
皮の歯応えと共に舌の先から脳内るまでしっかりと刻まれる。

一丁焼きに拘り其処に向けての努力を惜しまない姿勢は、
逐一目を光らせ焼き型内のたい焼きを確認する作業や、
焼き色や焼きムラの状況を観察する過程に現れる。
昨今の大手たい焼きチェーン店に見られる薄皮回帰の風潮は、
此処「鳴門鯛焼本舗」からの触発なのではなかろうか。
そう感じさせる程其処には効率を度返ししても、
一丁焼きで薄皮たい焼きを焼き上げ続ける断固たる意志と、
揺るぎ無い強い決意が表れていると感じさせるのだ。

価   格○黒あん 160円
住   所○東京都新宿区四谷3-13-13
営業時間○10:00-22:00
       無休
 
   
  

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2014年05月05日

神楽坂くりこ庵【飯田橋@中央本線】

     
 
たい焼きを買いに飯田橋に来た。

目指すは『神楽坂』。
早稲田通りを渡す牛込橋が目の前に掛かる西口改札を出て右折。
飯田橋RAMLAの前を過ぎれば外堀通りの交差点で信号待ち。
そこから眺める早稲田通りが延びる先には、
緩やかな坂道が連なる街路樹の緑の奥に吸い込まれていく様で、
そこから別世界へ誘われて行けそうである。
この交差点が一端となって所謂『神楽坂』は形成される。
異界へ踏み込まん勢いで坂を上り行けば、
暫くすると今しがた通り過ぎた商店街とは様相の異なる、
PORTA神楽坂の黒めで巨大な外観が眼前に現れ、
目指す「神楽坂くりこ庵」がその1階部分で営業している。

たい焼きチェーン「横浜くりこ庵」のコンセプトショップ的店舗で、
“たい焼きカフェ”というテーマで展開中の店は、
店舗前の歩道に置かれた行燈型の看板の形状や、
その脇に立てられた朱色の野点傘の趣や、
そこから店舗に至るまでの石畳のアプローチなど、
茶屋や甘味所を印象させる造りになっている。
そこから至る店頭には柿渋色の縁台や切り株の椅子が並べられ、
店頭全面を覆うガラスを切り抜くように墨色の枠が縁取り、
深紺の暖簾を提げた軒の上には板看板が掲げられている。
かつての花街『神楽坂』的イメージが街の景観と良く馴染んでいる。

開店時間直後。
店先には料亭か割烹の料理人の様な作務衣姿の店員さんが、
開店準備の余波で各々忙しそうである。
その横をすり抜けて入店。
入口のそばから奥へと延びるカウンターと、
その上に置かれたショーケース。
中にはすでに小倉あんの他、
取扱い全たい焼きがズラリと並んでいる。
さらに店舗奥には甘味処の様な飲食スペースがある。
焼き台はカウンターの奥でよく見えない。
焼き場はもう一人店員さんが焼き型を見守っていたが、
ふいに調理場の奥に入って作業を始めると、
ミキサーの轟音が店内に響き渡る。
開店間際にはよく見かける光景。

早速店員さんに注文をお願いする。
さて「神楽坂くりこ庵」のたい焼きは、
皆一様に自分の餡を表記した“帯”を締めている。
これは“芸者リスペクト”なのだろうか。
その昔、この坂をシャナリシャナリと歩いていた、
粋で鯔背な『神楽坂』の芸者を偲ばせる姿のたい焼きが、
巻かれた帯も艶やかに小箱に行儀よく並んでゆく。
そんな光景はたい焼き屋を“待合茶屋”に変え、
店員さんに会計を済ませてたい焼きを受け取れば、
さながら気分は“大旦那”にでもなった気分。
綺麗処を大勢引き連れて颯爽と店を後にする。

「神楽坂くりこ庵」脇を通り抜けた先にある、
理科大の石階段のアプローチ脇に腰かけて、
箱の中に並んだたい焼きの“帯”をつまんで持ち上げる。

以外に重い。
ズシリと指に伝わる予想外の重量。
急ぎ手のひらで受けて一先ず観察すると、
本体の周囲を囲むようはしる白い縁。
その印象と合わせて全体的に淡い色調のたい焼き。
更に帯を解いてみる。

その時に不意に湧き上がった高揚感は、
食欲とは別の何処か邪な欲求が現れ、
何となく後ろめたい気持ちになってしまったのは、
土地柄が成せる業なのだろうか。
それとも只の特殊性癖の発露なのだろうか。
不意に芽生えた感情の正体を確かめる意味も合わせて、
帯を取って再度たい焼きを確認してみる。

淡くフラットな焼き目は洋焼菓子的で、
ふっくらフワフワな焼き上がりを連想させるに容易い外見と、
それを覆す重量感と無骨な手触りのギャップ。
謎に満ちたうす皮たい焼きの核心に迫るべく、
何はともあれ先ずは食べてみる。

戸惑いは衝撃に変わる。
本体を取り巻く縁の部分食感は何だろう。
芳ばしいくせに歯応えが特殊で、
うす皮だというのにボリボリと音を発てて口内で砕ける。
あげく皮の水分が少ないので結束が緩く、
力加減如何でボロボロと崩れるように壊れていく。
皮が裂けるとかひび割れるとかはよく有るが、
皮が“崩落”するというのは珍しい。
その上モグモグと咀嚼していると、
口内の水分を随時吸収していくので、
調子に乗って縁だけ食べ進めると喉が詰まる。

その猛威は本体部分の皮も基本的に同じ。
厚さが均一ではない焼き上がりの皮なので、
マチマチな上にギリギリの結束力が全体を支配している。
申し訳程度には餡の流出を抑えているが、
そんな緩い結束は口内の水分の前では意味をなさない。
薄い個所からボロボロと崩れていく感覚は、
層を形成し損ねた小麦だけの分厚いパイ皮の様で、
口内至る所に張り付いて細胞内の水分すら奪う勢いで猛威を振るう。
その癖風味はショートブレッドの様に芳ばしい。
神楽坂の花街と英国庭園がシンクロする一瞬。

何とも個性的な皮を一頻り堪能している一方、
ボロリとはみ出してくるホクホク熱い小倉あんは、
優しい甘さとタップリの重量感を湛え、
小豆の風味も損なうことなく口内に満たしてゆき、
尚且つ性悪の皮をまとめて舌先にズシリと乗っかって、
そして一切合財をひっくるめて胃袋に収まるのである。
この餡も水分量は少なめに炊き上げていて、
これが粘度が高めでネットリしいている割には、
べた付きの無いスッキリした仕上がりになっている。

この餡と皮の組み合わせがうす皮でありながらズシリと重いたい、
高密度で甘味も香りも凝縮された焼きを作り上げている。
このたい焼きなら飲み物も傍らに欲しくなるのは必須。
そういった意味では“たい焼きカフェ”という形態は、
絶対的な必然性を持っているのであろうと、
いまだ冷めやらぬ様々な昂揚感に翻弄されつつ思い至る。

価   格○小倉あん 143円
住   所○東京都新宿区神楽坂2-6-1 PORTA神楽坂 1F
営業時間○10:00〜21:00
       無休     
 
   
  
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2014年03月21日

廣瀬屋【中井@西武新宿線】

たい焼きを買いに中井に来た訳では無かった。

所用で乗った西武新宿線から乗り換えの為に、
都営大江戸線中井駅に向かうとなれば、
当然に気になるのは「廣瀬屋」の動向と現状。

ここ最近の週末は西武新宿線の利用頻度が多く、
その度に「廣瀬屋」に足を運ぶものの巡り合せが悪く、
購入の運びにには至らず仕舞いで涙を飲む始末。
そして今日に奇遇にもこの地に至って考え及んだ事といえば、
ならば平日ならばどうか?という事。

時刻は午後2時。
折しも小雨が降りしきり寒さがぶり返してはいるが、
期待の高まりを消し去る程の距離でも無い。
とはいえ通過儀礼程度の考えで妙正寺川沿いを行く。

すると見えて来たのは赤い幟。
この先にあるラーメン屋のではない。
しっかりと記された“たいやき”の文字。
その正面には黄色い軒の下に下がる赤い暖簾。
ここにもしっかりと“たい焼”の文字と華麗に跳ねる対の鯛が2尾。
その下に開かれた窓の奥には人が立っていて、
焼き上がったたい焼き達が並んでいる。

期待していたとはいえ突然訪れた「廣瀬屋」との対面に、
踊り出したくなる衝動に必死に理性で地べたに足を張り付けて、
この機会を逃してなるかと半ば意地になりつつ、
それでも隠し切れない喜びに満たされて、
先客が済むまでウキウキと大人しく待つ。

順番が来て注文をお願いする。
不足分が焼き上がるまでの間を、
おばちゃんのご厚意により店内で待たせていただく。
お邪魔した店内は何時か見た気がする古典的甘味店の設えで、
どこか映画のセットを見る様な非現実感で満ちている。
夏場はたい焼きを休み、かき氷・あんみつなどを提供するそうだ。

待つ間は陽気なおばちゃんと世間話。
中井近辺のたい焼き今昔物語とおばちゃんのたい焼き指南に始まり、
高齢者の就労問題と若者の就職難に纏わる談義と、
それに伴う今日日の若者達の食文化と日常生活の動向とその未来。
日頃からたい焼きを焼き続ける事による老人性痴ほう症の抑止と、
経済的・商業的側面の関係性や因果関係の推察などなど。

他愛のない雑談その間にも、
型に生地をクルリと流し込む時も、
着々と餡を鯛の腹に収める時も、
二つの生地を併せる時も、
おばちゃんのたい焼きを焼き上げる手に澱みは無い。

そしてお客は絶え間なくやって来てはたい焼きを買っていく。
町内美化活動中のおじさんも挨拶にやって来る。
店の前に不法駐輪してある自転車の持ち主の確認をして、
ハンドルに警告タグを巻いて行き挨拶を交わして去って行く。

そして話題が相続税対策に及び、
おばちゃんの健康の秘訣はたい焼きを焼く事との結論に至った所で、
少し丸っこい面構えのたい焼きは焼き上がった。
料金を払い長居した事に詫びを入れ店を後にする。

当初の目的地である都営大江戸線中井駅に降りて、
早速に熱々の一尾をコインロッカー脇で取り出す。
焼きたての芳ばしい香りと熱を一杯に堪能して一口。
肌寒く薄暗い地下鉄の片隅でじっくりと堪能する、
噛む度に熱気が口内に充満する歓喜のひと時。

表面のカリカリと中のフワフワという焼きたての特権をフルに味わい、
生地の風味を鼻腔にたっぷりと充満していく。
次いでやって来た餡がどっしりとした甘さで、
口内にニュルリと侵入して舌に容赦なく押し寄せてくる。
熱々の餡は丸く角が取れた様な甘さで皮に寄り添う。
古典的なたい焼きは同時に安心感も味わえる。

細い川縁の道は様々な世代の学生が行き交う通学路でもある。
その立地に在るからこその正統派駄菓子たい焼きであり、
子供の冒険心をくすぐる“買い食い”たい焼きでもある。
そして“買い食い”の誘惑に勝てなかった嘗ての子供達が、
未だに魅了されるに足りる懐かしい味のたい焼きでもある。

価   格○あんこ 130円
住   所○東京都新宿区中井1-3-5
営業時間○13:00〜19:00
       不定休
       


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