東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2014年05月02日

にしみや商店【新富町@東京メトロ有楽町線】

     
 
たい焼きを買いに新富町に来た。

5番出口の先は入船橋交差点。
新大橋通りと都道473号線が交差して、
おまけに首都高まで埋まっているやけに視界が開けた交差点。
その出口を税務署方面へ向かった雑貨屋のある2つめの角を右へ、
3本程十字路を超えた位に歩いた所に「にしみや商店」はある。

城壁の様な巨大オフィスビルが建ち並ぶ大通りから、
喧騒から逃れるように一本入った裏通りは、
かつての古い町並みの名残が至る所にの残る。
料亭の様な平屋には行燈型の看板がさがり、
稲荷神社が玄関先にある蔵を構えた屋敷や、
美しく剪定された低木の植え込みが黒塀を飾る。
一方、低層のオフィスビルや中小の商店の並ぶ細い道には、
配達業者のトラックや社名入りワゴン車が多数行き交い、
午前中最後の荷卸しが終わろうとしていた。

その頃になると閑散とした通りにポツポツと人影が増え出し、
それに呼応する様に眠りから目覚めた飲食店が、
次々と道端に看板を出して商いを始まる。
古今東西の各々な趣で数多の定食屋が鍋を振るい、
弁当屋は路面に出した卓の上に商品を積んでいく。
路肩の移動販売の車にはOLが行列を形成し始め、
コンビニの店内は人でごった返ししている。

そんな光景を眺めながら至る交差点から見えるのは、
古びた造りの集合住宅が軒を連ねる街並み。
その一画にある昔ながらの風情をタップリと湛えた店先が見えてくる。
日除けの下に提げられた赤い暖簾を確認するまでもない。
交差点を超えた辺りから既にたい焼きの芳ばし香りが漂ってくる。

時刻は11時半。
喜び勇んで赤い暖簾を潜る。
おでん屋の屋台が横付けされたような店先には低いカウンター。
右手にデンと置かれたおでん鍋の存在感。
その奥には使い込まれて底が煤けている大小様々な鍋と、
沢山の調理器具や食器やナンヤラカンヤラ沢山の設備。
少々薄暗な店内の壁や天井と至る所を隙間なく、
素材、形状、用途、その他多種多様なモノが覆い尽くす。
数十年という月日が積み重ねてきた雑多な空間は、
記憶の中の“かつて見た懐かしい光景”と合致して錯覚を起こす。

店内でたい焼きを焼くおじさんは店の奥の調理台の前に一人佇む。
今はおそらくたい焼きを焼き上げているのであろう、
ガラガラと焼き型がぶつかる心地良い音がする。
開店準備を進めるおばさんは店の中を機敏にせわしなく行き交う。
コチラは“おでん”や“おにぎり”等の準備だろうか。
そして正面の棚に並んだたい焼き達。
すでに数尾が横たわってコチラを見ている。

これは良い時に来れた。
と、事に喜び更に店内に一歩足を踏み入れる。
直後、膝頭に衝撃を受けて眼下でケタタマしい音が響く。
行く手を阻む椅子に貼られた“準備中”の文字。

この粗忽物めが。
時間の確認を怠った。
一瞬の空白。
お互いを見遣るおじさんとおばさんと客。

ああ、やってるよ。
大丈夫よ。
しばし見つめ合った後、
すっかり機能停止した客に店内から声を掛けられる。
急ぎ機能回復して注文をお願いする。
おじさんはすぐさま袋にたい焼き達を詰める。
おばさんは手渡された袋を素早く包装紙でくるむ。
外光が薄ぼんやりと輪郭を形成して、
薄暗がりの中に浮かんでいるようなおじさんとおばさん。
現実と記憶が消えたり重なったりを繰り返す店先で、
絶え間なく熱を発する塊を受け取りとる。
咄嗟に現実を取り戻した後に無礼を詫びつつ礼を述べて店を去る。

初夏の様な強烈な日差しが降り注ぐ。
照り返す表通りを避けて至る所にある小路へ入る。
黒塀沿いの日陰の路地裏で熱々たい焼きを一尾取り出し、
植え込みと並んで早速一尾手に取る。

鱗やひれ等や輪郭そのものが原始的な無骨さで形成され、
やや小ぶりでありながら全身を力強さが纏っている。
焼き目の隈取られた様な表面の造りの荒々さも相まって、
鋳造物の様な風合いを醸し出している。
玄関や床の間に置いておくにも最適な風格である。

満足いくまで外見をひとしきり愛でたら、
先ずはパリッとしつつもコシのある皮の歯応えを堪能。
熱々の皮は噛み締める度に熱は冷めて行き、
次第に粉の風味が芳ばしく口内に広がる。
やがて食い破られた隙間から次々と餡が押し出されてくる。
薄い造りの胴体から溢れ出す餡は結構なボリュームで、
皮以上に熱々の餡が粒立ちもクッキリと舌に乗り、
慌てふためきつつ口内で転がし徐熱して行く。
やがて匂い立つ小豆の風味と果実の様な優しい甘さが現れ、
口内で皮の風味と混ざり、やがて飲み込まれていく。

たい焼きを食べ終える頃になると、
静かだった「にしみや商店」の前にも人だかりが出来はじめる。
軒先の“おでん”“おにぎり”“たいやき”の暖簾が、
買い求める人の出入りで絶え間なく揺れる。
暖簾の隙間を縫うように日傘を携えたおばあさんが出て来て、
大事そうに紙包みを抱えて小路の奥へ去ってゆく。
オフィス街には異質な存在のたい焼きも、
そこに在る事の必然を街の歴史が繋ぎ止めている。

ランチバッグを抱えたOLさんも買っていく。
スーツ姿のサラリーマンも買っていく。
作業着のおじさんは沢山買っていく。
エプロン姿のコックさんが一尾咥えて厨房に入る。
その光景を只ぼんやり眺める。
たい焼きを追いやる季節が近づいてくるのを感じながら。

価   格○たいやき 130円
住   所○東京都中央区新富1-10-6
営業時間○11:30〜18:30
       土・日・祝 定休     
 
   
  
posted by EY at 23:35| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 中央区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月11日

御菓子司 しげ田【八丁堀@東京メトロ日比谷線】

たい焼きを買い八丁堀に来た。

先ずは大雑把に鉄砲洲稲荷神社を目指す。
大鳥居を背にして銀杏並木の歩道を左へ。
湊1丁目交差点の手前の交番の道を挟んだ斜向かいに、
目指す「御菓子司 しげ田」がある。

和菓子屋の提供するたい焼きで、
午後からの販売というのは良く在るケース。
ここ「御菓子司 しげ田」のたい焼きは午後の2時から。
目論見通り来店する。

和菓子やどら焼きが並ぶガラスケースの奥、
矍鑠としたおじいさんが切り盛りしている。
その脇にはたい焼きを焼くスペース。
中ではお兄さんが待機している。

そのお兄さんにたい焼きの注文を受けると、
颯爽と商品を袋に詰めておじいさんに渡す。
殿を務めるのはおばあざん。
商品と金額の確認と精算を請け負う。
見事な連携がなされる。

商品を受け取り、客足絶えない店先から離れる。
鉄砲洲稲荷神社の垣の裏辺りで一息ついて、
早速に一つ取り出す。

野焼きのうつわの様な質感の皮を纏う、
殊更に色黒のたい焼きは、
こちらも黒糖が入った美人さんで、幾分か赤道に近づいた感じ。

立ち昇る香りはダイレクトに黒糖。
脳裏に浮かぶのは沖縄の蒸し菓子『黒糖アガラサー』。
しかも持った感触が“フカッ”としている。
“フカッ”としているが、ずしりと重い。
中々のボリュームを持ち、縁には大ぶりなバリまである。

早速皮を齧る。
凄い弾力。
モチモチと言うか、これは最早『餅』である。
その上に厚みも弾力あって、齧り付く顎を容易く跳ね返す。
豪快に喰い千切ると、ぶちりといった感触が伝わる。
その生地は黒糖の色が際立つ茶色で、
忙しなく動く口内を黒糖の香りで満たす。

中の餡は、言わずもがなの和菓子屋さんの餡。
ボリュームも存在感も申し分なく、
小豆の風味を振りまいている。
絶妙の皮と餡のバランスが和菓子感を一層高める。

とにかく歯応えが尋常じゃないこのたい焼き。
冷めた硬さでは無く、出来立てでこの弾力。
販売期間が短いという希少価値じゃなく、
この皮こそが希少価値という事が、
実際に食べて、噛み締めて、思い至る。

価   格○鯛焼き(11月上旬〜3月中旬頃) 145円
住   所○東京都中央区湊1-10-8
営業時間○14:00〜18:00(土曜日は16:30頃まで)
       日曜日/祝祭日 定休
       


posted by EY at 22:07| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 中央区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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