東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2014年07月05日

横浜 くりこ庵 吉祥寺店【吉祥寺@京王井の頭線】

     
 
たい焼きを買いに吉祥寺に来た。

北口に出て駅前の平和通りを左へ。
ハーモニカ横丁を通り過ぎた先の武蔵通りを右折して、
おなじみメンチカツの行列が見えてくる辺りに、
目指す「横浜 くりこ庵 吉祥寺店」がある。

2間位の広さの店舗はまだ真新しく、
上部には簡略化の臨界を突破したイラストが描かれた、
目立つ事この上なしの白い巨大な看板を掲げている。
看板下の赤い庇の奥は全面木肌で覆われ、
保温ケースが併設され鳥の子色の暖簾を提げた会計口側と、
謎のレリーフを掲げたガラス窓の向こう、
焼き型がズラリ並ぶ調理場側に分けられている。

行列の際は焼き上げ風景でも眺めて時間をつぶせという、
店側の配慮を感じさせる造りになっている。
そして今も焼き場ではおねえさんが次々に、
たい焼きを焼き上げる光景が繰り広げられており、
縁台も置かれ足腰のケアにも抜かりがない。

世間一般のたい焼き店同様、
氷物や冷え物の商品も十分な品ぞろえで、
夏対策も万全な「横浜 くりこ庵 吉祥寺店」の店先には、
おばさんと夫婦と姉弟の組み合わせの家族連れが並んでいる。
その後ろに付いて順番を待つ事にする。

ふと見遣る視線の先には、
今日もメンチカツを求めて行列が出来る。
行列には事欠かないココ吉祥寺。
恐らくメンチカツの行列の横には、
モナカを買い求める行列が出来ているだろう。
更にココに来るまでにチラリと見えた、
今流行のデニッシュ生地のたい焼き屋にも、
大勢の人だかりが出来ていた。
果ては朝方や平日の昼間には羊羹を買い求める行列も出来る。
もはや行列が出来るの事が吉祥寺の日常といえる。

そんな日常風景を眺める視線の脇では、
父親がたい焼きの品定めか頻繁に辺りを見回す。
母親はスマホを構えてありとあらゆる角度で、
たい焼き屋の撮影に余念がない。
姉は静かにショーウィンドウ前にジッと佇み、
たい焼きが焼き上がるのを眺めている。
弟はひたすらにその3点を行き交う。

家族の交わす言葉が聞こえてきた。
会話のイントネーションと父親の容姿や仕草が、
子供のころに観たマイケル・ホイと瓜二つな事を鑑みて、
恐らく中華系の方々と思われる。

お陰で父親の声はテレビ放映時の、
故広川太一郎氏の吹き替えバージョンで逐一、
一語一句余す事無く脳内変換されていく。

いや〜お父さんたい焼きを食べタイヤキ、
な〜んて言ったりなんかしちゃったりして〜。

脳内で繰り広げられる妄想に浸る日本人を他所に、
父親は一歩引いた位置から店内を窺い始め、
娘に向かって何やら話しかけ手で促す仕草を繰り返す。

一方の娘はそんな父親の挙動を気にも掛けず、
ただ一心にショーウィンドウ奥で、
焼かれていくたい焼きを眺めている。

弟は鞄から突如おもちゃの剣を取り出して握りしめ、
縁台に膝立ちになり姉と並んでおもむろに剣を掲げたり、
たい焼きに齧りつくマネをしたり、
姉を剣で突いてみたりと忙しない。
男児が落ち着きが無いのは万国共通である。

そんな光景を母親はひたすらに写真に収めている。

やがて先客のおばさんが会計を終え、
たい焼きを受け取らないまま店を去って行く。
会計口でおにいさんが慌てて声を掛けるという、
ありがちな微笑ましい光景を垣間見る。
そこで生まれる笑いが育む異文化コミュニケーション。
お互いを見遣り笑い合うアジア諸国の男たち。

ハタと気が付き先を譲ろうとする中華親父。
ボケた顔で礼をして好意に預かる日本親父。
はち切れんばかりの笑顔で日本親父を見つめる弟。
その光景をも写真に納める母親。
そして一心にショーウィンドウ奥を見つめる姉。

歩み出た保温ケースには既に全商品が並んでいる。
会計口で笑顔のおにいさんに注文をお願いするのは、
当然の“小倉あん”と魅惑の“ごまあん”の組み合わせ。
この時“ごまあん”の在庫はあとわずかとなり、
おにいさんが“ごまあん”の追加を調理場に告げる。
調理場のおねえさんが冷蔵庫から胡麻餡のパックを取り出す。
補充された胡麻餡をアンサシに詰めて、
あらかじめ焼かれていた素焼きの皮に、
墨の様胡麻餡を落としてゆく。

その光景を見た瞬間突如姉が破顔する。
急速にテンションが上昇してゆく姉は、
横で頻りに母に向けポーズを取る弟を呼び寄せ、
ショーウィンドウ内を指差して何やら興奮気味に喋りかける。
弟も興味を示すが姉程の高揚感は無い様子。

姉の関心のツボに虚を突かれている間に、
たい焼きは包まれ袋に入れられて目の前に用意されていた。
急いで会計をして袋を受け取り、
おにいさんと父親に礼をして店頭から離れる。
先ずは雨を避けようとアーケードへ向かう。

茶屋の店先で焙じられる茶の香りを嗅ぎながら、
市松模様の包を開けるとそこからは経木の香りが立ち昇る。
一尾取り出したたい焼きは厚皮で、
通常の駄菓子系たい焼きと銀座櫻家の間位のボリューム。
以前の神楽坂とは違いコチラが「横浜 くりこ庵」本来の姿で、
カリフワの皮と多種多様な餡の組み合わせこそが本流となる。
なので神楽坂以外では卓は無いし茶の提供も無いのが普通。

焼きたての極上の食感とはいかないが、
十分にカリフワを体感できる厚皮を思う存分噛み締める。
粉の風味が口いっぱいに広がり隅々に行き渡る、
この瞬間こそが厚皮たい焼きの醍醐味である。
皮も楽しめてこその厚皮たい焼きと個人的には思う所である。

その準カリフワな皮に挟まれた餡は粒立ちはおぼろだが、
滑らかな舌触りの仕上がりで心地よく口内に広がる。
小豆を構成していた粒子の一つ一つが、
厚皮だからこそ生じる気泡に隈なく入り込み
混じりけの少ない小豆由来の舌触りと相まって、
カリフワの皮に絡みついて一体となる。
控えめな甘さが皮の風味を壊さずに最後まで引き立てて、
果ては餡と皮の相性というたい焼きの原点に想いを馳せるに至る。

何時の間にかたい焼き激戦区となった吉祥寺の、
庶民派たい焼き代表の「横浜 くりこ庵 吉祥寺店」には、
庶民派だからこその強みを発揮して一見の外国人をも魅了する。
そしてそんな物珍しさ以上の魅力が味にある事を知って欲しい。
全世界にあんこの輪が広がる切っ掛けとして、
この赤い豆の甘いペーストの事が日本旅行の土産話の、
話題のひとつになる事を切に願うばかりである。

価   格○小倉あん 126円
住   所○東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-7
営業時間○10:00〜21:00
       年中無休  
 
   
  
posted by EY at 23:16| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 武蔵野市のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月18日

ギンザ プティ カスタ コピス吉祥寺店【吉祥寺@京王井の頭線】

たい焼きを買いに吉祥寺に来た。

北口にあるサンロードのアーケードの奥。
最初の左折路の先にあるコビス吉祥寺。
かつての伊勢丹吉祥寺店。
そこの地下1階はフードテラスと呼ばれ、
その一画に「ギンザ プティ カスタ コピス吉祥寺店」がある。

牛乳と卵が作り出す甘い香りを漂わせる店頭。
透明のショーケースの奥には、
スペースコロニーの様な金属製の容器に
様々な形の商品が並んでいる。
全体的に金色、若しくはオレンジ色に輝くブースは、
目にも眩く温かな色調の空間を作り出す。

基本は小さいドーナツ型だったり、
ベビーカステラの様なボール状だったりで、
お馴染みのパンダ型もあったりする。
そんな中に魚の形をしたヤツがいる訳である。

見た目にも判りやすい魚型で焼いているし、
公式に“鯛”だと謳っているので、
たい焼きと呼ぶことに些かも疑問はない。
紛う事なきたい焼きである。
ただ小さいだけである。

店頭でダンディな店員さんが、
今日は上手に焼けましたと、自身に満ちた表情で発する。
俄然、否が応でも期待感が高まる。

自慢の商品を受け取る。
早速開封して歩きながら、先ずは一匹口へ。
軽い食感の歯応えが口内の隅々に伝わる。
これは想像の遥か上を行くサクサク感。

表面のカリカリ感と中のフワフワ感が、
こんなに小さいたい焼きでありながらも備わっている。
どうせスポンジ系と高を括っているとビックリする。
これはノンフライ・スナックに似た感覚。
中の餡もこの食感を損なわないで、
適切な分量で納まって、口内で最大出力で風味を広げる。
これが通常通りか、今日は上手に焼けた結果なのかは不明だが、
想像以上のクオリティである。

気を抜いていると、あっという間に完食してしまう、
歯止めが効かない危険な食感の誘惑。
出来立てを買ったら直ぐに腰を落ち着け食すのが良い。
当然に飲み物は先に買っておく。
と、肉屋の前の行列を眺めつつ深く感慨に至る。

価   格○つぶあん 16個550円
住   所○東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-16
       コピス吉祥寺A館 B1フードテラス
営業時間○10:00〜21:00
       年中無休
        


posted by EY at 22:36| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 武蔵野市のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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