東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2014年06月14日

なにわや【一橋学園@西武多摩湖線】

     
 
たい焼きを買いに一橋学園に来た。

夏仕様に店先を飾りつけた「薄皮たい焼き みづほ 一橋学園店」の、
脇を通る道に入って行って一橋学園駅前商店会の支配下にある、
真っ直ぐに延びた道を鷹の台方面へ歩く。
やがて何時しか道が西学園共栄会商店街の支配下に変わる頃、
都営津田町三丁目アパート群角の十字路を左折すれば、
地元の人気店「なにわや」に到着する。

かの老舗「浪花家」一派とは異なるのは一目稜線。
縞模様のテント隅の控えめな「なにわや」の文字に比べて、
軒から提げた光沢ある緑色のビニール地の日除けには、
デカデカと“たい焼”と“ポーズやき”と書かれ、
その日除けの働きによって外から店内は一切窺えない。
日除けの下に並んだ鉢植えは初夏というのに緑少なく佇み、
その脇に空いた暗がりのエントランスの奥で、
かつての甘味処へ至るガラス扉が細く開かれている。
エントランス脇には見慣れたデカいソフトクリームが浮かんでいるが、
その前に生い茂った植木の葉が覆い隠している。

またもソフトクリーム。
ここでも焼き粉物に代わり夏場をソフトクリームが取り仕切る様で、
個人経営で住宅街の一軒家の店ならその転換は早かろう。
ましてや「なにわや」の看板商品は“ポーズやき”である。
この時点で“ポーズやき”が何かは一切詳細は知れないが、
転換ならメイン商品よりもサブ商品である“たい焼”が先であろう。
“たい焼”の文字を目にして浮かれた頭を不安が立ち込める。

その不安を払拭すべく道を渡ろうとした時、
一台のスクーターがスルスルと「なにわや」前の路肩に止まる。
降り立ったおにいさんはメットを取りコチラを見ている。
先客かなと立ち止まりコチラもおにいさんを見る。
一向に動く気配が無いおにいさん。
ならばお先にと「なにわや」のエントランス横に赴く。

エントランス脇には小窓が開かれていて、
その片側には品書きの紙が一面に貼られていていた。
先ずはたい焼きの確認をと目を遣った矢先に、
店の奥からふらりとおじさんが現れた。
これ幸いにと客はおじさんにたい焼き販売を確認する。

やってます。

おじさんは静かに答える。
それでは早速お願いしようと品書きに目を薄葬とした瞬間、
狙いすました様におじさんは言った。

あんこ。

あんこ?
つまりは“あんこ”ならあるという事だろうか?
あんこなら願ったり叶ったりで早速たい焼きを注文すると、
おじさんはそそくさと店の奥に引っ込んでゆき何やら作業を始める。
その様子をコチラからは窺い知る事は出来ない。

仕方なく焼き上がりを待つ間に店内を眺めて過ごす。
目の前に開かれた窓から見えるのは、
大きなボウルとソース等の調味料。
窓口正面の壁には古い緑色の冷蔵庫が、
この墨色に染まった空間で強烈に色を主張している。
通り沿いに開いた日除けの垂れた窓に寄せて設えた焼き台には、
タートル号の様な焼き型らしきモノが6つ並ぶ。
使い込まれた焼き色をくすませながら口をシッカリ閉じたまま、
冷蔵庫にかなり接近して整然と置かれている。

そんな観察の最中に何か金属的なモノが転倒する音が頻繁に響く。
おにいさんのスクーターだろうか。
歩道に出て見るとおにいさんがスクーターと取っ組み合っていた。
どうやらスタンドが上手く立たない様で、
縁石に横たわるスクーターの後輪当たりを頻繁に足で探っている。

おにいさんの悪戦苦闘を他所に再び店内に目を遣る。
たちまち視線が止まる。
窓口に貼られた品書きを再度確認するとそこには、
“ポーズやき”“ソフトクリーム”そして“白い皮のたい焼”とある。

もしや“白い皮のたい焼”といったら、
近代日本たい焼き史に燦然と輝く時代の徒花。
あのいわゆる“白いたい焼き”の事だろうか。
最早都内では滅多にお目に掛かれない絶滅危惧種。
白いのにレッドデータに記載されそうなたい焼きに、
こんな所で巡り合う事になるのだろうか。
そんなドキドキする客を余所におじさんはこもりっきり。
そして外ではおにいさんが相変わらず金属音を頻発させている。

そして数分後、“ポーズやき”の正体にある程度の当たりが付き、
味の想像に突入した頃にようやくおじさんが現れた。
笑顔で差し出す紙包みを受け取って急ぎ代金を支払い、
手に伝わる熱を再確認後に改めておじさんに礼を述べ店を出る。
路肩では一応の問題解決に至った様子のおにいさんが、
スクーターから離れた場所からコチラを見ている。
コチラは視線を軽く受け流しながら道路を渡り、
斜向かいの都営津田町三丁目アパートの石垣に腰を下ろす。

早速に包みを開ける。
中から出てきたのは紛うこと無いアノ“白いたい焼き”の姿。
しかしその様子は傍から見ても判る位に可也くたびれていて、
全身から目一杯の倦怠感を醸し出して横たわっていた。
若干の不安と疑問を抱きながら一尾手に取る。
瞬間デロンと垂れ下がり“つ”の字に折れ曲がる。
記憶にある白いたい焼きはもう少ししっかりしていたはずである。

急ぎ両手で支えるとたい焼きの表面がざらついていて、
見るとイングリッシュ・マフィンの様な粉が表面にまぶしてある。
恐らくは融着防止の策なのであろうが、
この粉の成分は何なのか若干気になる所ではある。
続けざまに起こる目くるめく驚愕の連続で、
客を退屈させない中々に曲者のたい焼きを早速一口齧ってみる。

柔らかい。
この皮だから当然であるが予想以上に柔く、
モチモチというかクニクニというか噛み応えも十分ある。
そして密着を未然に防ぐ優れもののこの粉が、
食べる時もその能力を如何なく随所に発揮している。

のブニッとした皮の中にジャムの様なペースト状の餡が、
小豆の餡の甘さと風味を思いの外携えて口内で広がる。
餡の甘さと皮の食感が自分がたい焼きを食べている事を忘れさせ、
奇妙な感覚の世界へ徐々に誘って行く。

クニクニと結構に厚手の皮を噛み締めながら店先を見遣ると、
おにいさんが窓口前に立っているのが見える。
もはや“鯛の形の温かい大福”と言っても過言ではないたい焼きの、
尾びれを口に放り込んで噛み締める。
とは言うものの皮の表面や縁のバリの先端には、
うっすら焼き目が付いているのを見るにつけ、
これは見た目以上にたい焼きとしての体を成していると思い至る。
まあ世の中には“焼き大福”という代物もあるが、
鯛の形で焼かれている物が“たい焼き”で無くて一体何なのだ。
おじさんは店の奥で如何なる方法で、
このたい焼きをアツアツにしたかは判らぬ仕舞いではあるが。

そんな些末な事を若干気にしながら、
クニクニと奥歯でモチモチの皮を噛み締める。
「なにわや」の前ではスクーターに紙包みを放り込んで、
おにいさんが再び取っ組み合いを始めている。
そんな様子を眺めながら石垣から腰を上げて帰路に着く。
やがて中々に掛からないエンジンに業を煮やしたおにいさんは、
やおら後輪辺りを蹴りつけている。
キックが付いているスクーターなのか?
ふと疑問に思って見遣ったスクーターの駕籠では、
おにいさんのキックに呼応して紙包みが跳ねまわっていた。

価   格○あずき(つぶあん) 110円
住   所○東京都小平市学園西町2-9-20
営業時間○11:00〜19:00 
       水曜 定休  
 
   
  
posted by EY at 23:43| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 小平市のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月15日

薄皮たい焼き みづほ 一橋学園店【一橋学園@西武多摩湖線】

たい焼きを買いに一橋学園に来た。

乗って来た列車の窓からも。
線路脇の看板と看板の隙間からも。
「薄皮たい焼き みづほ 一橋学園店」の看板は見える。
後は北口、南口、どちらでも好きな方から降りればよい。
目的の店は程よく両出口の中間位にある。
踏切はあるが、さほど電車も来ないのでロスにはならない。

時刻は午前11時前。
開店前なのはホームで確認済み。
先に所用を済ませてから、
午前11時過頃に伺うと既に開店済み。
早速先客の後に並んで順番待ち。

開店間際の店は品揃えが薄いのは致し方ない事。
先客の老人は希望の商品が無い為に妥協して小倉あん。
コチラとしては当然の小倉あんを選択。
其れと併せて、如何にも無視し難い“ゴマあん”を注文する。
“ゴマあん”の在庫が無いので焼き上がりまでの間暫し待つ。

今や数店舗を残す「薄皮たい焼き みづほ」の、
その貴重な店舗の一つである「一橋学園店」は、
掲げた看板の白さの際立ちと、線画のたい焼き達の佇まい。
それと溢れんばかりの手作り感が横の“畳”の文字と相まって、
何とも言えない味わいを醸し出している。
少し奥まった店頭は全体を小豆色で締めた店構えで、
雑多に並んだショーケースと商品ポスター等で溢れている。
重なり合うガラスの狭間から垣間見える店内では、

お兄さんが忙しげにたい焼きを焼き、
おばさんが会計と商品の受け渡しをして、
おじさんが店の奥でお茶を飲んでいた。

待っている間も来客は絶えない。
後にやって来た自転車の老人は小倉あんを2枚買ってゆく。
続いて仲睦まじい老夫婦は小倉あんを一枚づつ買ってゆく。
来客の老人率80%で、そこに於ける小倉あん率は100%。
やはり老人の小豆人気は盤石な物がある。

イビツな満足感に浸る間に品が揃いお会計。
そそくさと店を離れて直ぐ脇の駐車場で早速一尾取り出す。
焼きたての熱を惜しみなく放出するたい焼きの、
その体を取り囲むように張り出ているのは、

羽根にしては不揃いで、
バリというには大振りで、
フリルというには不格好なモノが、
四方八方に這い出ている。
その不格好なモノを一口齧る。

サクッと異様な程に軽く芳ばしい歯応えは、
スナック菓子か厚めのポテトチップスの様。
このスナック菓子を縁に纏ったが如きたい焼きの、
驚異の軽やかさは本体にも反映されている。

不用意に力を入れすぎるとアッと今にヒビだらけになり、
その隙間から餡がゆっくりと溢れ出す。
急ぎ口で向かいいれて回収すれば、
中々に個性ある風味の餡がたっぷりと口に収まる。
程よい甘さで小豆の粒もしっかりしている。
何にせよ、最後の最後までパリパリと音を立てる、
皮の存在感に圧倒されっぱなしである。

嘗ての様にまた其処彼処の街で、
このたい焼きを食べる事が出来る日が来るのを、
小倉あん好きの老人と供に心待ちにしたい。
それ程に思わせる魅力を持つたい焼きなのである。

価   格○小倉あん 120円
住   所○東京都小平市学園西町2-2-10
営業時間○11:00〜20:00
       無休
       


posted by EY at 22:42| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 小平市のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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