東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

2015年10月18日

一口茶屋 高円寺店【高円寺@中央本線】

     
 
たい焼きを買いに高円寺に来た。

駅北口へ出て左へ進み高円寺北口信号を渡る。
高架に沿って進んだ先にある横断歩道が掛かる道は、
それぞれが商店街へと至る道である。
高架下に入ると高円寺ストリートがあり、
高架を潜った左手奥のアーケードは高円寺palが伸びて、
右手を進んだ少し先には高円寺純情商店街へと至る。
そして真っ直ぐ進めば高円寺中通り商店街へ通じ、
商店街入り口ゲートのすぐ先の、
高円寺ストリートとの交わり口の角に、
小ぢんまりとした間口の「一口茶屋 高円寺店」がある。

平成元年開業の店舗だが、
店構えはそれ以上の歴史を感じさせる佇まいで、
少し薄暗がりの高架下に静かに建っている。
柱や壁は確実に築26年以上は経過しているだろうし、
軒を連ね並ぶ近隣の店舗も同様に古びが表れている。
その古びの中に静かに息を潜めていた店舗も、
今や開店準備が着々と進みいよいよ店先に灯りが燈る。

その頃合いを見計らって店頭に向かうと、
思ったよりも狭い店内に2名の人影が、
僅かな空間を滞る事無くスムーズに行き来をしている。
少し御歳を召した感じのこのおふたりは御夫婦だろうか、
火を扱う現場で特に表立った意思の疎通も無く、
滑らかな移動を繰り返す熟練の姿に目が釘付けになる。
やがて店頭でボケッと突っ立っている客に気付いた女将さんに、
頭上に「一口茶屋」の看板を掲げた、
構造的に正面であろう窓ガラスを開けて対応して頂く。
物腰柔らかな女将さんは焼き上がりまでの時間を告げ、
その旨を了承すると柔和な笑顔のまま準備に入る。

正面の窓ガラスに対面した調理場には、
6連式の焼き型が3台とたこ焼き台が置かれている。
どうやらたい焼き担当は女将さんで、
たこ焼きはご店主が仕切っているようだ。
背後には金属棚と調理台に冷蔵庫があり、
その僅かな隙間を調理器具や材料を持ちながら、
事も無げに行き交っている。

たい焼きの焼き型に生地を落とす女将さんは、
最初は専用器具であるチャッキリを使っていた。
しかし別の焼き型には生地をオタマで掬って、
焼き型に擦り込むように薄く伸ばしている。
そして入れられる餡子もまた、
それぞれが異なる餡切りに入れられている。
その外見は確かに遠目から見ても、
餡子の艶やアズキの粒が残った仕上がりに違いがある。

成程あれが“プレミアムたい焼”というヤツか。
一味違った艶の餡子は“大納言”を使用した特別仕様で、
それを堪能するために皮は薄く焼き上げられる。
何とも手間の掛ったたい焼きである。
薄く延ばされた生地が程よく焼き上げられた、
その上にタップリの極上餡子を乗せ、
更にその上に薄く生地を掛けて焼かれる。
それを見て不意に広島のお好み焼きを想像したのは、
漂ってきた芳ばしいたこ焼きの香りが要因であろう。

次々にたい焼きが焼き上がるのを眺めている間も、
その芳ばしい香りが次々に来客を生む。
大量のたい焼きを注文して去って行く自転車のお兄さん。
買い物帰りのおばさんはたこ焼きを注文後、
店先の縁台に腰掛けてスマホを眺めている。
顔見知りと思しき男性もやって来た。
不意に小さな店の前に出来た人集りに行き交う人々も足を止める。
帰りに買って帰ろうと話し合うカップルに、
父親に何時ぞやたこ焼きを食べた事を語る幼児の姿もある。

その光景に包まれながらやがてたい焼きは焼き上がり、
袋に詰めて手渡してくれた女将さんとご店主は、
やはり少しの言葉も交わさないまま、
プログラム管理された様な滑らかな動きを発揮している。
これはお互いの信頼が築き上げた軌跡なのだろうと、
四半世紀を過ぎて今や商店街の顔となった光景を顧みて、
シミジミと感心しつつ店舗を後にする。

熟練の品を抱えて向かうのは北口駅前のロータリ。
中州にある広場でベンチに陣取って荷を解くと、
熱気と独特の甘い香りが顔を包み込む。
手に取った焼き立てのたい焼きは、
その熱気よりも先ず皮の柔らかさに驚く。
薄黄色を帯びた皮自体の感触はフカフカしているが、
指がたい焼き内部へ沈み込む速度が速い。
そして内部の餡子が柔らかく全体にクニャクニャしている。
きっとフリース生地でたい焼きを造れば、
こんな肌触りだろうと想像する。

齧り付いてみると皮の食感はモチモしている。
粉の風味が真っ先に伝わる位に素朴な味で、
甘味は少なく噛み締めると玉子の香りが優しく漂う。
フワフワの食べ心地で厚みもあり皮の中には気泡も沢山あり、
ここ最近はすっかりご無沙汰の懐かしい感触である。
それに加えて絡まって来る餡子もまた懐かしい食感である。
ネットリ滑らかなペースト状の餡子は、
中でアズキの粒が時々存在を主張して来る時以外は、
粗挽きの漉し餡といった感じで舌に乗っかって来る。
シッカリとした甘味が口内にペタリとくっ付いて、
何時までも漂いながら折々でアズキの風味を思い起こさせる。

高級感やプレミア感は無いが、
此れこそ庶民派たい焼きの真骨頂であり、
フワフワの皮とネットリした餡子を湛えた、
往年の量産型厚皮たい焼きそのものである。
昭和の世に広まったたい焼きブームを支えたのは、
この姿のたい焼きが多かっただろう。
だから時々無性に食べたくなり、
そして思いがけず出会った時に自然と笑顔が零れるのだ。

価   格○小倉 130円
住   所○東京都杉並区高円寺北3-1-17
営業時間○11:00-21:30
       水曜 定休
 
   
  

posted by EY at 21:42| 東京 ☀ | TrackBack(0) | 杉並区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月11日

あんず【鶯谷@山手線】

     
 
たい焼きを買いに鶯谷に来た。

北口から言問通りへ向かい鶯谷駅前交差点を渡って、
そこから先へ伸びる尾竹橋通りを行く。
歩道橋を過ぎて根岸小前交差点を右に折れ、
少し行った所に根岸たい焼き「あんず」がある。

根岸小学校沿いの細い路地は至って普通の住宅街を貫き、
その先にある古き昭和の趣が残る一画へと導いてくれる。
良い具合に枯れた趣が漂う洋食屋をはじめ、
お好み焼き屋や焼き鳥屋がヒッソリ並ぶ軒並みと、
その手前の極普通の住宅街との汽水域にあって、
明るい墨色の板壁の真新しい一軒家の一画に設けられた、
鮮やかに映える鶯色の暖簾には、
まさに杏色の文字で「あんず」と記されている。

開店時間前が迫る店の入り口は今、
ほんの少しだけ下げられたシャッターで隠されている。
薄暗がりの店内では人影が動いているのが見え、
併せて店外までほんのり漂う甘い香りに、
本日の開店準備が進められている事を確信する。

休日の午前11時前を迎える住宅街はとても静かだ。
少し開いた洋食屋の勝手口から漏れる微かな物音と、
時折囀る鳥の鳴き声以外の音は無いに等しい。
そこにポツンとたい焼き屋の開店を待つ輩は、
住宅街の“異物”として申し分無い胡散臭さである。
静かな割に人の行き来が多い細い路地で、
人々の遠慮ない視線を浴びながら待つ事数分、
入り口のシャッターをご店主が上げ切ったのを確認して、
急いで店先へと進みご店主に挨拶をしてから店内へ入る。

ダンディな風貌を湛えたご店主に注文を済ませ、
商品が揃う間にぐるりと眺める店内は、
ここ最近に歴史が始まったばかりの雰囲気が漂う。
調理スペースに揃う器具は新品同様の輝きを放ち、
店内を中央で仕切る腰の高さ位のショーケース内は、
持ち帰り用の箱で一杯に満たされている。
そのショーケースの上に乗る保温ケースの中は、
既に木枠の中で簀子に乗った数匹のたい焼き達が、
比較的スマートで薄ぺったい身体を横たえている。

保温ケースの光を浴びたたい焼きは薄黄金色で明るく、
遠目から見た質感はウレタン素材の見本品の様であり、
蕎麦せいろに乗った“天ぷら”をも連想してしまう。
それ位に淡く大雑把にいえば“白い”たい焼きだ。

一丁焼きの老舗たい焼き屋では比較的“白い”たい焼きは多いが、
それでも薄皮の其処彼処で餡子がはみ出し、
黒いコゲが出来て大小様々な斑点をこしらえてしまう。
しかしココ「あんず」のたい焼きは表面の焼き色が均一であり、
所々に浮かぶ黒い影は皮の厚みにムラが生じて出来た物で、
餡子がはみ出し焼けコゲて出来る強烈な黒さでは無い。

その余りに現実離れした“白い”輝きを放ち、
見る物の目を釘づけにするたい焼きは、
保温ケース横に置かれた焼き台で焼き上げられる。
そこに並んだ2つの6連式の焼き型は美しい銀色で、
少しの焦げ付きや澱みや曇りも無くキラりと光を反射する。
ナルホドこのマッサラな焼き型だからこそ造り得た物なのかと、
今この時にだけに生み出されかもしれない儚く初々しい輝きに、
世間の荒波に煤けた心が洗われる思いがした。

などと1人勝手に盛り上がりミソギを済ませた客をよそに、
ご店主は粛々と商品を揃え終える。
たい焼きの重さがズシリ心地良い袋を受け取り抱き金を支払い、
改めて礼を述べた後に店を出て来た道を戻る。

歩道橋の前にある根岸幼稚園に沿って設けられた、
雨上がりの上根岸公園のベンチで荷を解く。
袋を開けた途端に温かな空気と甘い香りが顔を包む。
そっと手に取るとかなり柔らかい皮の感触が、
フワフワの表面とフルフルの質感を存分に発揮する。
そしてやはり薄い。
この皮の質感でこの薄さのたい焼きとなると、
当然体内に納まった餡子の重さは大変な負担となる。
当初真っ直ぐに箱の中に並んだたい焼き達は、
嫌でも安定姿勢を取る事となり、
結果底部が広がった逆T字型となってしまった。

そこまで柔らかなたい焼きなので、
手に持てば尻尾の先端部は微かに揺れ、
その縁に着いたバリはフルフルと震えている。
指先は皮の下にある餡子の柔らかさまで確認できる。
噛り付いてみるとモチモチとした食感で弾力が強く、
コシがあって少し位力を入れても千切れない。
そして噛み締めると柔らかな甘味の中に、
小麦粉がしっかり存在する王道をゆく洋風の皮である。
これだけおやつ系駄菓子たい焼きの要素を持ちながら、
それでも「あんず」のたい焼きは皮が薄い事は、
この皮の性質があってこそなのだろう。

その皮にしっかり絡み付く餡子はネットリトした粒餡である。
口内に押し寄せてザラザラと舌を擦る感触とは裏腹に、
水分が多くて粘りも強い滑らかな舌触りを発揮する。
そこにハッキリとしているがキレの良い甘味と、
浸み込む様に広がって行くアズキの風味が追いかけて来る。
この汎用性の高そうな粒餡だからこそ、
個性的な皮の特性を損なわず自身の能力も発揮できるのだろう。

柔らかなたい焼きをフルフルと震わせて、
多くの子供が集う施設で幼い歓声を聞きながら食べる一時は、
この鶯谷の地において新たなたい焼き文化の誕生を、
リアルタイムで目撃するという大変貴重で有意義な時間となった。

価   格○つぶあん 150円
住   所○東京都台東区根岸3-11-6
営業時間○11:00〜18:00
       水曜 定休
 
   
  

posted by EY at 21:49| 東京 🌁 | TrackBack(0) | 台東区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月04日

薄皮たい焼 銀のあん 東京ソラマチ店【押上@東京メトロ半蔵門線】

     
 
たい焼きを買いに押上に来た。

東京スカイツリータウン方面改札からエスカレーターで地上へ出て、
ソラマチ商店街のある East Yard から Towar Yard に向かう。
ソラマチひろばからフードマルシェのある2階へ上がり、
5番地の一画に「薄皮たい焼 銀のあん 東京ソラマチ店」がある。

現在「薄皮たい焼 銀のあん」といえば日本全国的に、
何処の支店でも大概は看板商品が“クロワッサンたい焼”である。
この一大ブームを巻き起こしている人気商品は、
今や「薄皮たい焼 銀のあん」ブランドはおろか、
競合他社でも類似の商品が売られ程に普及している。
その勢いで今までの支店は次々カフェに模様替えして、
遂には“クロワッサンたい焼”専門店になって行くケースが多い。

そうなると肩身が狭いのは店名にも記された、
一般的は“薄皮たい焼”なのである。
ホームグランドである「薄皮たい焼 銀のあん」ですら、
すっかり活躍の場を失った“薄皮たい焼”の姿は、
都心の「薄皮たい焼 銀のあん」で見掛けるのは困難となっている。
今“薄皮たい焼”を購入するなら、
郊外にある「薄皮たい焼 銀のあん」の支店か、
系列の「築地銀だこ」に行ってみるのが常套手段である。
とはいえそこでも“クロワッサンたい焼”がメインで売られているが、
少しでも高い確率で“薄皮たい焼”が購入できる。

そんな希少な存在となった“薄皮たい焼”が、
都内の下町である押上で購入できるのは、
売られているのが日本屈指の観光地だからである。
それ以外に理由が見当らない。
何故なら国内外から訪れる観光客の皆さんに、
たい焼きを販売するのに“クロワッサンたい焼”だけというのは、
いきなり応用編から習わせるようなもので、
このままでは間違った認識を与えてしまう恐れがあるからだろう。
物には何事も順序というものがある。
基本の“薄皮たい焼”を食べてたい焼きを理解してから、
応用編“クロワッサンたい焼”を食べてもらわないと、
ただ焼き立ての魚型餡デニッシュを食べるというだけである。
それはたい焼きという文化に触れるという事にはならない。
そういった意味合いからココ東京ソラマチに、
正調「薄皮たい焼 銀のあん」が出店しているのは、
文化事業的観点から見ても大いに正しい事なのである。

営業開始間近には2階デッキ部分にも人だかりが増え始める。
警備員が更に大勢の観光客を引き連れて、
エスカレーターを上がって来てそのまま出入り口を開錠する。
世界各国様々な言語が入り乱れる中を、
颯爽と屋内へ入り込み区画番号29番へ一直線に向かう。
お目当ての「薄皮たい焼 銀のあん 東京ソラマチ店」は、
白く輝く行燈型看板を掲げて営業中である。

シックな木調とガラス張りのショーケースの向こうには、
大きく開かれた窓の奥に焼き型が並ぶ調理場が見える。
ショーケースの中には沢山の“クロワッサンたい焼”が、
立てられて並べられ幾つもの行列を作くり、
意外に明確に違いがある色味がグラデーションを描く。
その横にある保温ケースの中には“薄皮たい焼”が、
やはり立てられて並べられていて品書きの列は3つ。
代金を支払い品薄の“あずき”の焼き上がりを待つ間は、
人出も増え始めたフードマルシェ場内を徘徊する。
世界各国の観光客の間をフラフラ歩き回る事数分、
品も揃って行列も揃った会計口でたい焼きを受け取り、
場内のエスカレーター脇に置かれた銀のイスに腰掛けて荷を解く。

取り出したたい焼きは表面をカリカリに焼き上げられ、
指先をジリジリと炙る様な熱気を放つ焼き立てである。
その紛れも無い薄皮を早速一口齧ってみると、
ガリガリと砕けた表面とサクサクと崩れる中面の歯応えが伝わる。
皮の表面に滲み出た甘味が焦げて造り出す苦味と、
皮自体が発する小麦の風味と甘味が折り重なって混ざり合い、
なんとも絶妙な風合を漂わせて口の中を広がって行く。
皮を構成する生地の色合い的に茶色味が強いのは、
この際立った小麦の風味に関係があるのだろうか。
その小麦と共にほんのりと漂うのが柔らかなアズキの風味である。
なめらかに滑るような舌触りの粒餡は水気が多く、
ホクホクとして口内へモッタリと零れ落ちて来てはユルリと広がる。
サラサラの食感はアズキの皮と豆自体の成分の境界が曖昧で、
少し塊がある漉し餡の様な感覚で口内を席巻する。
サッパリとした甘味とアズキの風味が上品に仕上がっていて、
後味良くスッキリと喉を通過して行くのだった。

硬く焼き上がった皮は芳ばしく、
舌触りの良い餡子は極めて上品な仕上がり。
この様な上品なたい焼きがありながら、
購買できる場所が限られるというのは大変悲しい事である。
全ての支店での販売再開がなされる事を切に願いながら、
頭上に聳えたつ地上600メートル超の圧倒的存在感に浸る。

価   格○あずき 150円
住   所○東京都墨田区押上1-1-2
       東京スカイツリータウン・ソラマチ・タワーヤード2F
営業時間○10:00〜21:00
 
   
  

posted by EY at 21:04| 東京 ☁ | TrackBack(0) | 墨田区のたい焼き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。